Vol.0007 不穏 ~下からアッパー。顔面キック~  [2013/11/12更新]

平穏の反対語

不穏

医療者にとって、とても厄介なものです。
一歩間違えれば、患者様はもちろん
医療者側も危険な目に合うことがあります。
きっと、みなさんにもご経験があるでしょう。
マツコも噛まれそうになったり
叩かれそうになったり
腕をギュニュウ~とつねられたり…

そんな中の上位2つは、

下からアッパー!

そして、

顔面キック!

下からアッパーの方は、不穏がひどく
何故か、加湿に異常にこだわりを持たれ、
本来、加湿器として使うものではない吸入器を
MAXの状態にして
雲の中にいるようなお部屋を作りあげていらっしゃいました。
そこに、吸入器の消毒をしたかったマツコが現れ、
握りしめてらっしゃる、吸入器のホースの先を貰おうとした時、

決まりました!“下からアッパー!!”

マツコ、ノックアウト!
顎が「カコッ」と鳴ったことだけは覚えています。

ちなみに、噛まれそうになったのもその方です。
しかし、噛み切る直前に入れ歯が勢い余って飛び出し、
セーフ
申し訳ないですが、下からアッパーのエピソードよりも、
その入れ歯が飛び出してしまった時の方が印象的で
その方を思い出すときは、その状態のお顔がパッと出てきて
ついつい口元が緩んでしまいます。

顔面キックの方もやはり不穏がひどく
家族の了承を得て、抑制をさせて頂いていたのですが
どうしたものか、上手に全てを外して
暴れ落ちそうな危険な状態を発見し、抑えようとした瞬間、

またしても、きれいに決まりました!
“顔面キック!!”

「バコッ」といい音でした。
泣くつもりはなかったのですが、痛すぎて
涙が出てしまいました。

どちらも、正気ではない
本来のその方ではないときの出来事なので
仕方ありません。
後々、不穏から脱して、患者さん自身は覚えていないのに
家族に教えてもらってバツが悪そうに申し訳なさそうに
謝って下さる方もいらっしゃいますが、
本当に仕方がないことなのです。
それに、私がもっと反射神経がよく、機敏だったら
もしかしたら回避できたことかもしれません。

自分が鈍かった、危険に対する判断能力が甘かったと
いつも反省してしまいます。
そう、お互いに気まずい思いをしないためにも
ちょっぴり反射神経に自信がない人は
より慎重に気を付けるべきですよね。

しかし、不穏は暴力行為だけではありません。
点滴(抹消、CV、Aラインetc…)やチューブ類、
ドレーンの抜去、転落・転倒、誤飲、離院など
命が危険な状態になってしまうことが一番怖いです。

できるだけ、そうならないように
看護介入したいものですが、どれだけケアをしても
不穏が緩和しないときもあります。

また、そんな時は患者様自身も身体的につらいことを忘れずに
そして、付き添うご家族の心情も察して
ケアをしたいですね。

不穏状態の自分の家族を目の当たりにして
誰よりもショックを受けているのはご家族です。
ショックだけではなりません。
このまま、認知症になるんじゃないだろうかと
不安を抱くご家族も多くいらっしゃいます。
そして、あまりに不穏が強い場合には、
ご家族に付き添いをお願いすることもあります。
そうなると、ご家族にかかる負担が一気に重くなります。

患者様の背景としてのご家族ではなく、
ご家族もまた患者様と同じ位置での対象者として看る
家族看護の精神を持ち、
患者様とそのご家族と向き合っていきたいですね。

今まで「家族看護」という言葉を意識して看護をしていませんでしたが
今回ブログを書くにあたって、少し家族看護について調べると
自分の看護観とマッチする部分が多く
「家族看護学会」
これからちょくちょくチェックしてみようと思います。

これは、私のやり方ですが、手術や緊急入院など
不穏になりやすい状態にある患者様やご家族には、
不穏について必ず説明をしていました。
まずは、不穏について正しく知ってもらい、
もし、不穏になってしまっても
知識不足による不安を抱くことなく
不穏と正しく向き合って頂きたいという思いからでした。

また、不穏になってしまった患者様のご家族には、
不穏は、一過性のもので、誰にでもなり得るものだと説明し、
ご家族が笑顔で患者様に接することができるように
日々少しずつでも良い方向に変化したところをお話ししていました。

非日常の緊急入院や手術、機械や管に囲まれて
朝なんだか夜なんだかわからない集中治療室などで
痛かったり苦しかったり…
平穏でいることの方が、私は難しいと思います。

マツコがもし、その様な状況になったら
間違いなく不穏コースです。
だって、夜勤明けで寝て起きると
外が真っ暗で時間がわからない時ですら、
軽くパニくってましたもん。

「今は、今日なの?明日なの?夜なの?朝なの?
それとも、明日の夜なのーーー?」

日時が自分でわからない時って、本当に怖いです。

ですので、できるだけ非日常が日常になるように
そして、日常の時間感覚を取り戻してもらえるように
マツコはまず、日が昇ればカーテンを開け、
その日の日時や気候を伝え、
モーニングケアや口腔ケアを行っていました。
昼も夜も同じように、看護師都合の時間ではなく
人として当たり前の日常的時間に合ったケアを提供できるように
心がけていました。

いかにして、非日常の中にその方の日常を作り、
その方本来の平穏を取り戻してもらえるか、
看護の腕の見せ所ですね。

しかし、忙しい勤務の中で、
全て完璧で理想的な看護を提供することは
はっきり言って、できません。
ましてや、看護師一人だけで張りきって取り組んでも、
できません。
看護師だけでなく、医師や他コメディカル、ご家族と協力して、
みんなで向き合って乗り越えていきたいですね。

なんだか今回は、題名の割に
真面目に看護観を語ってしまいました。
しかし、看護観とは、看護師一人一人により違うものですので、
もし、あなたの思う看護と違ってもそこはご了承してくださいませ。

マツコ