Vol.0016 夜勤の思い出~えんぴつが一本~  [2014/01/22更新]

スーパーナースに入社して
マツコが一番はじめにしたお仕事は
スーパーナースが提供している
自費の訪問看護 プライベートナースの
パンフレットの見直しでした。

誤字脱字がないか
文章はおかしくないか
看護用語で間違っている言葉はないかなど…

そこで上司から渡されたのが
一本の鉛筆でした。
新品の鉛筆を自分の机の上にある
手動の鉛筆削りで削ってくれて
マツコに渡してくれました。

鉛筆なんて久しく使ってないなあ…と思いながら
なんで鉛筆なんだろう?と疑問に感じました。
しかし、入社してまだ日も浅く
大きな猫をかぶっていた頃でしたので
余計な疑問は心にしまって
渡されたまま鉛筆を使うことにしました。
久しぶりに鉛筆で書く感触は
なんだかとても懐かしく
パソコンの画面上で
簡単に削除やコピー、貼り付けをするよりも
紙面を何度も読み返して
自分で文章を書いて消してを繰り返す方が
パンフレットの内容=自分の会社のサービスの内容が
頭に入り言葉に思いが入るかんじがしました。

どんな意図があって
上司が鉛筆を使っているのか
聞く機会を逃したままですが
マツコはそのままその与えられた鉛筆を今も使い続けています。
鉛筆を使い続けるとどうしても芯が擦り減ってしまうので
鉛筆削りをしなくてはなりません。
上司の机にしかない鉛筆削りを毎度拝借しているのですが
ふと、手動の鉛筆削りをゴリゴリ回しながら
むかーしの夜勤を思い出しました。

マツコが循環器病棟の新人だった頃の病棟は、
循環器内科の病棟とCCUが併設しており
マツコは崖に転落した後、ロープを貰って這い上がる途中に
(崖に転落については過去に投稿した“No.0012.挫折について”へ!)
うっかり入ってしまった異端児でしたが、
毎年、看護学校の中でもちょっと賢かったり、志が高い群の人達が
救急病棟やICUなどと並んで配属希望を出す
いわば“エリート”が多く集まる病棟で
医療・看護体制がきちんとしていました。
教育や委員会、係、看護研究、インシデントの対応
どれを挙げても抜かりなく、
院外のセミナーや学会にも積極的に参加して
井の中の蛙になることなく常に新しい風を入れつつ
振り返りなどのフォローアップも決して忘れない病棟でした。
整理整頓なども厳しく、夜勤になると
毎日が大掃除のように机の上を
スポンジに台所洗剤を付けて磨き上げます。
マツコが新人だった頃はまだ、紙カルテでしたので
机の上にはボールペンやマジックがついついてしまっていました。
夜のお掃除タイムでは
そんなボールペンなどの汚れ一本も許されないくらい
スポンジで磨きあげなければいけません。
また、前途したように紙カルテでしたので、
検温表の体温と脈拍は赤青鉛筆で記入をしていました。
その為、鉛筆削りで鉛筆を削ることが多く、
真夜中の掃除のときに鉛筆削りのゴミを捨てることも、
夜のお掃除のひとつでした。
で、「そうそう、鉛筆削りのゴミ捨てなきゃね」と
新人ナースマツコは軽~くゴミを捨て
先輩に掃除が終わったことを報告すると…

「マツコ、マツコの掃除はゴミを捨てるだけなの?」

と。
ええ、前回の“「ゎ」の衝撃”で書いたときのような
意地悪姑コメントで注意されてしまいました。
残念ながら前回とは違う先輩です。
ただ、前回の先輩と違って
おかしな剣幕で怒られたわけではなかったので
素直に注意を受け入れることができました。

この時の正解のお掃除とは、

“鉛筆削りのカスが入った入れ物は水洗い、
本体の中は不潔ガーゼで拭き取り、外はアルコール綿で拭くこと”

いやー、正直今でも
そこまでしなくてもいいんじゃないの?と思いますが、
しかしここにその病棟の繊細さが現れていると思います。

とにかくそんな掃除ひとつとっても
全員で一生懸命に取り組みます。
しかも完璧を追及します。
であるからこそ、看護における観察やケアも決して妥協はしません。
もちろん、新人に対する教育も。
マツコのプリセプターは、勉強嫌いなマツコの為だけに
10枚以上に渡るお手製の心電図の勉強プリントを作成してくれ
テスト形式に勉強するのが好きだとマツコが言えば、
やっぱりお手製のテスト用紙を作成してくれ
それをまた別のプリセプターの年代の先輩が
テストに付き合って下さいました。
マツコが関連図が好きだと言えば
自分が参加した勉強会の資料を貸してくれ、
参考書が多すぎて何を買ったら良いかわからないと言えば
「いきなり買わなくていいから」と言って
自分の参考書を貸してくれました。
夜勤から日勤への報告に自信がないマツコに
同じ夜勤の先輩が夜中に申し送りの練習に付き合って下さいました。

もちろんその熱心さ、細やかさは看護場面で大いに発揮されていました。
脳にダメージを受けて体動が激しく
ベッドからの転落の危険が高い患者様にも
無理やり抑制するのではなく
マットレスを敷き詰めシーツを敷き
その患者様のその段階に合った看護を工夫しながら提供し、
患者様は長期に渡り集中治療室にいながらも
CCU(ICU)症候群、不穏になることもなく
転倒・転落や事故抜去などを起こすこともなく徐々に回復され、
最後は一般病棟に移り、
新聞を読んだり同室の患者様と談笑したりして
自分の足で歩いて退院されるまで回復されました。

内服や水分の自己管理が出来なくて
何度も入退院を繰り返してしまう患者様には
根気よく疾患指導、自己管理指導を行い
外来でも声をかけてフォローをしていました。

看護研究も一つの病棟で3~4チームに分けて様々な
研究テーマに毎年取り組んでいました。

もちろん、そのような繊細さを持って、
繊細な患者さんのサインの変化や、データ、バイタルの変動に
敏感に気づかなければ
相手は人間が生きるための中心部であり、
とても精細なお方「心臓」なので、
ひとつ何かを見落としたり間違えたりすると命に関わりかねません。

だからこそ、直接看護に影響がなさそうな
お掃除や整理整頓の場面でも常に繊細さ、完璧さを求める
トレーニングをして「看護の精神」を磨かされていたのではないかと
それなりに経験を積んだ今、振り返って思います。

“背中を見て学ぶ”

なんて昭和の職人っぽいですし、
実際はたくさんフォローして教えて貰ったのですが、
それでも、背中を見て、追って、学ぶことが沢山ありました。
追って学びたい、つい追ってしまうそんな背中ばかりでした。

見て 聞いて 感じて

まさに看護そのものを

全身で感じながら学ばせて頂き成長させて頂きました。
憧れる先輩も目標にしたい先輩もたくさんいた病棟でした。
その先輩方の学年をとっくに超えた今でも
いまだに自分はそのレベルに達していないと思っています。
元々の人間性や器が違うのでしょうか?
でも、マツコはマツコなりに先輩方に教えて頂いた
看護の精神をこれからも持ち続け
追いたくなる背中にいつかなれるように
自分が今できることを精一杯取り組んでいきたいと思います。

さいごに。
鉛筆を使う時、いつもこころの中で
歌っている歌をご紹介します。

「えんぴつが一本」

幼少期に習っていたエレクトーンで弾いて歌っていた歌です。
なんだかちょっぴり切ないけど、
そっと背中を押してくれる歌だと思います。
ご興味がある方はぜひ一度聴いてみて下さい。

マツコも
今日も 明日も
たのしいときも かなしいときも

えんぴつを一本

持ち続けて使い続けていきたいです。

マツコ