Vol.0064 ペットと患者さん~ワンコ編~ [2015/01/23更新]

皆さまごきげんよう。

愛犬とお昼寝をしていたところ
くつろぎ過ぎた愛犬が
仰向けかつ白目をむいて寝てしまったあられもない姿を
SNSに投稿し、「いいね」を荒稼ぎしたマツコです。

もし、人権ならぬワン権があれば、
うちの愛犬に名誉棄損で訴えられて
負けてしまっていたでしょう。

さて、そんなペットですが、日本では、
今や子どもの数よりも
ペットの数の方が多いと言われています。

そのため、病院で働いていた頃も、
ペットを飼っていらっしゃる患者さんが多く
患者さんと他愛ない話をする際に
よくペットのお話をしていました。

ペットを飼っていらっしゃる患者さんとは、
ペットの話をすれば、つかみはOK!

みんな顔がほころび、笑顔になります。

そんな患者さんとペットのお話の中で…
印象に残っているものを2週に分けて
それぞれワンコとニャンコのお話をしたいと思います。

今週は、
「大動脈解離」で運ばれて緊急入院になった
患者さんとワンコのお話。

この病気は、名前のごとく
「大動脈」が「解離=裂ける」病気です。
大動脈は、心臓から腎臓までを縦に走る
体の中で一番大きい血管で、
長さは40~50cm、
太さは、胸部大動脈で直径約2.5~3cm、腹部大動脈で2~2.5cmほどあります
そのため、人によりその裂け方、裂ける部位が異なり、
その裂け方、部位によって
治療方針が手術か手術じゃないかに分かれます。

その患者さんは、手術ではなく、
内科的治療を行っていらっしゃいました。

内科的治療とは、点滴や内服などの治療の他に
この疾患の場合は、「安静療法」という治療が行われます。

まあ、治療を行うと言っても、
とにかく安静がメイン。

でもね、
これってすごくツラいんです。

動脈解離を起こすときは、人によりけりですが
かなりの痛みを伴います。

しかし、ほとんどの方は数日で痛みが消えてしまうため、
健康な方と何ら変わりのない状況になります。
この状況がなかなかのクセモノ。

痛みもなく、傷もなく、意識もしっかりしている、
にもかかわらず…
ただひたすらベッド上で、じ~~~っと、
していなければいけません。

もちろん、
血圧を見ながら少しずつ動ける範囲は広がっていきますが、
それも本当に少しずつ…。

お通じもトイレではできず、ベッド上で行わなければいけません。
そんなのそう簡単に出来るわけでもなく、
みなさん本当に苦戦されます。

今回の患者さんも内科的治療でしたので
しばらくベッド上安静の日々が続きました。

ベッド上安静は、
たとえ、すぐ1m先に窓があっても
そこに行くことすら、許されません。

そんな中、
やっとベッド上安静から室内歩行まで
安静度が解除された日のこと。

マツコがその患者さんの病室を訪れると
しきりに窓から叫んでいらっしゃいます。

一瞬、

「えええ?今頃、不穏になってしまったの?」

と思ってしまいました。

この病気は、
とにかく不穏・せん妄になる方が非常に多い病気。

みなさんもご存じのように、
不穏やせん妄は、一時的に我を忘れてしまう認知症に似た症状で
時折、叫んだり点滴を抜針してしまったり興奮状態になる方もいます。

そのため、立ち上がって何か大声で叫んでいる患者さんをみて
不穏を疑ってしまったのです。

しかし、近づいてよく声を聞いてみると
しきりに誰かの名前を呼んで、
手を振っていらっしゃるのです。

「おお~い!わかるかぁ~!?」

手を振っている先を見ると、
駐車場の軽自動車の横で患者さんの奥さんが
中型のワンコを抱いて立ってらっしゃいました。
ワンコもしっぽを振っています。

「どうされましたか?」

と話しかけると

「あいつは、俺のことが大好きで、
突然俺が入院してからずっと元気がなかったんだ。
今日やっと窓まで歩いて行けるようになったから、
家に連絡して駐車場まで連れてきてもらったんだ。
ほら、喜んでるだろ?」

と言いながら手を振る患者さんは、
満面の笑みでうっすら涙目になっていらっしゃいます。

「良かったですね!本当に良かった!」

とマツコも言いながら涙目…。

ワンコはもちろん、
患者さんもつらくて寂しかったはず。

マツコも独身時代から、ワンコを飼っているのでわかります。

出張などで数日、ペットショップに預けることもあったのですが
再会時は、自分が泣いてしまっていました。

会えない間も、ちゃんとご飯食べられているかな?
捨てられたとか思ってないかな?

と心配になり、
(自分が一番寂しくて)
ついついペットショップに
様子うかがいの電話をかけていました。

でも、今回の患者さんは、
やっと室内歩行の許可が出たばかり。
あまり興奮して血圧が上昇してしまうのもよくありません。

感動の再会は、早々に中断して頂くことに…。
その後、ワンコを家に連れて帰ってから、
奥さんが病院に戻ってこられました。

そして、興奮気味に

「もう、すっごく喜んでたよ!!」

マツコも

「良かったですね!!」

と言いながら、
患者さん、奥さん、マツコの3人で、
(また涙目になりながら)
病気の事、ワンコのことをお話しました。

今や、人間の子どもの数よりも多い、
日本のペット数。
こんなお話は、日本中いっぱいあるはずです。

たかがペット。犬のこと…。

とお思いの方。

いいえ!

家族です!!

しかも、正確に会話・意思疎通ができないから、
余計に歯がゆい思いが募るのです。

「病気で入院するけど、帰ってくるからね。」

と言っても、ペットには伝わりません。
逆にペットが何かを思っていても
私たちにはわかりません。

なんというか…

携帯電話が普及していなかった時代の恋愛のよう。

メールやラインですぐに連絡がつく今とは違い
伝えたい気持ちを伝えられなかったり
会いたい…声がききたい…
と思っても、連絡がつかなかったり。

どれだけ想っていても離れていては
何も伝わりません。

向こうがどう思っているのかも
わかりません。

だから、
ただ、ただ、想いが募るばかり…。

ちなみに、あの患者さんとワンコはまるで
ロミオとジュリエットのようでした。

ん??
じゃあ、あのおじちゃん患者さんがジュリエット!?
なんだかそれも滑稽な話ですが…(笑)
当事者達はいたって大真面目。

まるで、

「ロミオォォ~!」

「ジュリエットォォ~!!」

そう呼び合っているかのような
シチュエーションでした。

その患者さんは元気に退院され
最後はハッピーエンド♡でしたが、
中にはそうはいかないこともあります……。

次回は、
一人暮らしのおばあちゃんとニャンコのお話。

賛否両論あるペットと高齢者の問題。

マツコも何が正しいのか未だ断言はできません。

できたら、一緒に考えてもらえたらと思います。

では、また来週。

マツコ