経管栄養とは?その目的と重要性
経管栄養とは、口からの食事摂取が困難な患者さんに対して、チューブを通して栄養を直接胃や腸に投与する方法です。
この方法は、消化機能が保たれている患者さんに対して選ばれる栄養補給法です。栄養状態の維持や改善、免疫力の向上、QOL(生活の質)の向上に役立ちます。
経管栄養法の種類と特徴
経管栄養法には、患者さんの状態に応じていくつかの方法があります。
主に使用されるのは以下の3つです。
- 経鼻経管栄養
- 胃ろう(PEG)
- 腸ろう
それぞれに適応期間や手術の有無の違いやメリット・デメリットがあり、患者さんにとって最も適した方法が選ばれます。
以下は「経鼻栄養」「胃ろう」「腸ろう」の違いをまとめたものです。
| 項目 | 経鼻経管栄養 | 胃ろう(PEG) | 腸ろう |
|---|---|---|---|
| 投与経路 | 鼻から胃または腸へチューブ挿入 | 腹部から胃へチューブ挿入 | 腹部から腸へチューブ挿入 |
| 適応期間 | 短期(1〜2か月程度) | 長期 | 長期(胃が使えない場合) |
| 手術の有無 | 不要 | 必要(内視鏡または開腹) | 必要(内視鏡または開腹) |
| メリット |
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| デメリット |
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| 看護のポイント |
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| 主な使用例 |
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看護師が知っておくべき実践手順
必要物品の準備
以下の必要物品を準備する。
- 1)カテーテルチップ(経管栄養用注射器)
- 2)経腸栄養用容器
- 3)栄養剤
- 4)投与ルート
- 5)白湯
- 6)注入器具(経管栄養用セット)
- 7)点滴スタンド
- 8)聴診器
- 9)手袋
- 10)エプロン
栄養剤の準備
滴下筒の1/2に栄養剤を満たし、投与ルートは先端まで栄養剤を満たしておく。
患者さんの体位を整える
経管栄養は時間がかかる処置のため、体位変換や排泄ケアをすませておく。
痰が多い場合は事前に吸引を実施する。
経管チューブの抜けを確認
口腔内で、経管チューブがとぐろを巻いていないか確認する。
経管チューブの先端位置を確認
シリンジで胃内容物を吸引し、色や量を確認する。
※胃内容物の残留が多い場合は、注入を中止する可能性があるため医師に確認しましょう。
栄養剤注入を開始
投与中のルート抜去は誤嚥につながるため、チューブの位置に注意。
※自己抜去のリスクがある患者さんには、チューブが目に入りにくい位置に設置するなどの工夫が必要です。
- 滴下速度は?
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一般的に経管栄養を導入する際は、50mL/時程度のゆっくりした速度から開始します。
その後、消化器症状などのトラブルがなければ100〜300mL/時程度に調整することが可能です 。ただし適切な注入速度は患者さんの状態によって異なるため、個別の判断が必要です。
また、医師の指示や施設ごとの基準が設けられていることもあるため、事前に確認しておきましょう。
注入終了後の処置
※チューブ内の閉塞防止のために必ず行なう。
カテーテルチップを外し、栄養チューブのキャップをする。
※キャップを閉め忘れると、栄養チューブから胃内容物が逆流するため注意。
誤嚥予防のため、注入終了後30分〜1時間は頭部挙上のまま体位を維持する。
片付け・記録
注入量・時間・患者さんの状態などを記録に残す。

よくある合併症とその原因・対策
経管栄養には、さまざまな合併症のリスクが伴います。
以下に、主な合併症を原因や対策とともに一覧でまとめました。リスクを正しく理解し、早期発見と予防に役立てましょう。
| 合併症 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 下痢 | 栄養剤の種類や注入速度が合っていない | 栄養剤の変更、整腸剤の使用 |
| 嘔吐 | 注入速度が速すぎる | 体位を保持し、注入速度を調整 |
| 誤嚥性肺炎 | 胃内容物の逆流 | 体位管理、口腔ケアの徹底 |
| チューブ閉塞 | 栄養剤残留 | 注入後のチューブ洗浄、薬剤を完全に溶解して使用 |
| 感染 | 不衛生な管理 | 手洗い、器具の消毒、挿入部の清潔保持 |
まとめ
経管栄養は、患者さんの栄養状態を支える大切な医療ケアの一つです。
一方で、合併症のリスクも伴うため、原因を正しく理解し確実なケアを実践することが求められます。
安全で質の高い看護を提供するためには、日々の観察と丁寧な対応を心がけることが大切です。
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スーパーナース編集部
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