今回は前回(はじめてのお看取り≪編前編≫)の続きです。
後編、ちと長いですがお時間いただけたら嬉しいです🐙
そろそろかなぁ、という感じで颯爽と現れたAせんせー。
なるんが、まだbさんのお姉さん(長女)とお兄さん(長男)が着いていないこと、
お兄さんには連絡もついてないこと伝えると
まじかーー、間に合うかなぁ。
と心電図モニターを真剣な顔で見つめています。
脈がゆっくりと、リズムを刻んでいました。
気が気でないなるんは、他の患者さんたちが落ち着いていてくれることをいいことにbさんのお部屋に入り浸り
奥様が不安そうにしているので、どうにか安心してもらおうと必死でした。
お姉さん達が着くまで、できるだけ傍にいなきゃ…と、変な使命感にも燃えていたかもしれません。
そんな状況をしばらく見ていたAせんせーが、ナースステーション戻ってきたなるんに言いました。
「おまえが、部屋にそんなに行ったって仕方ないだろ。」
とにかく必死だったなるん。
「え!」 と、驚き
「でも、奥さんがすごく不安そうなんですよ。お姉さん達つくまでできるだけ傍にいた方がいいと思ったんです。」
と「これぞ看護」とばかりに訴えると
「おまえがそばに居たってそんな変わんねえだろ。家族じゃねんだから。」
Aせんせーが飄々と言い放ちました。
「は?何言っちゃってんの?この人。医者だから看護がわからないんだ」
と、新人のくせに、リッパな看護をしている気になっていたなるんは、
反論したい、したいけれど語彙力ないし、それよりも何よりもバックグラウンドの看護の経験もない。
あるのはただの「これが正しいはず」という感情です。
少々大きくなった声で、出た言葉が
「そんなことAせんせーにもわからないじゃないですか!!!」
と勢いよく啖呵を切りました。
ちょっと驚いた表情のAせんせー。
こんなに奥さんと私は信頼しあっているのに… 何故か泣きそうになる。
そんななるんを見て、焦った先輩が間に入ってくれました。
泣きそうになりながらも、bさんの部屋に向かうわたし。
でも廊下の途中で、ハタと足が止まりました。
ある考えがムクムク浮かんできたからです。
「あれ?しかしそんな信頼しあっているのか?
奥さんとわたし。いやけっこういい関係なはず。
でも、家族ではない。家族のようになれるわけない。だって看護師なんだし。
ていうか、逆に家族水入らずの大事な時間を邪魔していたのか?」
何にも見えなくなっていたわたし。
なんか急に恥ずかしくなり、余計涙がこぼれそうになりました。
間違っていたのか? でも他に何ができた?
これからどうすればいいんだろ…
何にもできないくせにイッチョ前にせんせーにもケンカ売っちゃって…
その時に、奥さんが部屋をバンっと出てきて
「連絡とれました!、よかったーーーー30分くらいで着くって」
と安心した表情で伝えてくれました。ホッとしました。
30分後、お姉さんもお兄さんも無事にお部屋に着いて。
そこからは、なるんもお部屋には最小限に訪室し
夜明けが近くなったころ、静かに最期を迎えられたbさん。
傍らに、奥さん、お姉さん、お兄さん。みなさん涙を浮かべながらも、とても穏やかでした。
「間に合ってよかったぁぁぁぁぁぁ」
心底思いました。
そこから旅立ちの準備を終えて、お迎えがきてご家族ともお別れです。
朝焼けがキレイななか奥さんが
「不安ななか、そばにいてくれてありがとうね」と言ってくれました。
途端に我慢していた涙があふれてきて
困った奥さんが「あらあら、主人のために泣いてくれてありがとうね」
と素敵な勘違いをしてくれました。
Aせんせーが「お前が泣いてんじゃないよ」と笑っていました。
これがなるんが初めて担当したお看取りです。
間に合わないかと焦ったり、Aせんせーに言い放ったり、葛藤したり、奥さんにお礼を言ってもらったおかげで
とても思い出深いものになりました。
今でも、あれが看護だったとは胸を張れません。
奥さんにお礼は言ってもらったものの、私の自己満だったような気も多分にあります。
ヒーロー気取りだった私にAせんせーは考える機会を与えてくれました。
先輩は温かくつたない思いあがった看護を見守ってくれました。いまでは感謝しかないですね。
ちなみに、Aせんせーとはその後も何回かケンカしています笑
でも今でも仲良しです(たぶん) 。
その後のケンカの話も、いつかできたらいいです。
ではでは、長文失礼しました。
次回は…「はじめてのお手紙」です。
新人時代は「はじめて」が続きますね。
覚えることたくさんで仕事も全然できなくて。苦しかったけれど1億円もらっても戻りたくないけれど、
かけがえのない時間だったと、いまは思います。
では、またお会いしてください!
今回もありがとうございました!!
みなさんおカラダ大事に、自分の声を聴いてあげることも忘れないでくださいね(なんかの宗教ではないです笑)





