看護の現場では、患者・家族・多職種スタッフと、毎日たくさんの人と関わります。
その中で「どうしてこんなに気を遣って疲れるの?」「自分は看護師に向いていないのかな…」と、悩むことも少なくありません。
そんなとき役立つのが、性格傾向を知る心理学ツール「MBTI(エムビーティーアイ)」です。
自分のタイプを理解することで、強みが活きる働き方や、ストレスの原因がわかります。
ここでは、看護師に多いMBTIタイプの特徴と、向いている職場環境・キャリア形成に役立つポイントをわかりやすく解説します。
自己理解のヒントとして、ぜひ活用してください。
MBTIとは?看護師が知っておきたい基礎知識
MBTIとは、ユングの心理学理論をもとに、人の性格傾向を16タイプに分類する診断ツールです。
看護師として働くなかで、自分の強みやストレスの傾向を客観的に知るきっかけになります。
日本MBTI協会|MBTIとは
MBTIの4つの性格軸
性格傾向は4つの軸の組み合わせで決まり、看護の現場での得意分野やストレスの感じ方にも影響します。
それぞれの特徴を、簡単に押さえておきましょう。
E/I『エネルギーの向け先』
E(外向型)は、「人との関わり」が原動力で、患者やチームとの対話が多い環境で力を発揮しやすいタイプ。
一方I(内向型)は、一人で集中できる時間を大切にし、少人数の関係性を丁寧に築くことが得意です。
看護業務の中でも、得意なコミュニケーションの形が異なります。
S/N『情報の受け取り方』
S(感覚型)は、経験や事実をもとに、目の前の変化を確実に捉える傾向にあります。
手順が明確な業務で力を活かしやすいタイプです。
N(直観型)は、パターンから未来を読み取り、「もっと良くできないか?」と改善に意識が向きます。
現場での役割の違いが、チーム全体のバランスにつながります。
T/F『意思決定の傾向』
T(思考型)は、客観的な根拠や安全性を重視するタイプ。
状況整理や迅速な判断が求められる場面で頼られる存在です。
F(感情型)は、相手の気持ちに寄り添い、安心感を与える力に優れています。
どちらも看護に欠かせない視点で、補い合う関係性が理想です。
J/P『物事の進め方』
J(判断型)は、予定通りに進めることで安心でき、タスク管理や業務調整が得意なタイプです。
一方P(知覚型)は、状況の変化にしなやかに対応し、急な予定変更でも柔軟な対応ができます。
夜勤や救急など環境に応じて、強みが生きる場面が分かれます。
診断傾向を看護で活かすための基礎知識
MBTIは、「向き・不向き」を断定するものではありません。
大切なのは、自分の傾向を知り、強みを伸ばし、苦手を補う方法を見つけることです。
「強みが発揮される職場環境」「負荷がかかりやすい状況」を理解することで、無理のない働き方につなげられます。
看護師に多いMBTIタイプ3選
看護師の中でも特に多いとされているMBTIの3タイプを紹介します。
「自分に近い!」と感じるポイントがあれば、強みを活かせる働き方のヒントになるはずです。
ISFJ(擁護者)
ISFJ(擁護者)は、患者の小さな変化にも気づけるやさしい観察者。
チームの調整役としても頼られる存在です。
一方で「自分がやらなきゃ」と背負い込みすぎてしまうことも……。
無理せず助けを求めることが長く働く鍵になります。
| 役割 | 支援者タイプ |
| 強み | 丁寧なケア・共感力・粘り強さ |
| 向く職場 | 内科病棟、老年看護、回復期病棟 など |
| つまずきやすい点 | 責任感過多・ストレスを溜め込みやすい |
ESFJ(領事官)
ESFJ(領事官)は、周囲をよく見て動ける縁の下の力持ち。
患者にもスタッフにも、安心感を与える存在です。
ただ、頼られすぎたり、苦手な人間関係が続いたりすると、疲れが溜まりやすい傾向があります。
境界線を引くことが大事なタイプといえるでしょう。
| 役割 | チームワークの中心 |
| 強み | 協調性・コミュニケーション力・サポート精神 |
| 向く職場 | 外来、クリニック・地域包括ケア など |
| つまずきやすい点 | 人間関係ストレスに弱い |
ISTJ(管理者)
ISTJ(管理者)は、安全性や手順を重視し、危機的状況でも落ち着いて対処できる頼れるプロフェッショナル。
管理業務や特殊診療のような場で、真価を発揮するタイプといえるでしょう。
一方で、急な予定変更が多い環境だと、負荷が高くなるケースもあります。
| 役割 | 実務と安全の番人 |
| 強み | 正確性・冷静さ・責任感 |
| 向く職場 | ICU・手術室・救急外来 など |
| つまずきやすい点 | 環境変化をストレスに感じやすい |
MBTIタイプ別|向いている働き方

MBTIタイプによって、「ストレスが少なく力を発揮しやすい職場」は異なります。
診療科の向き・チームとの相性も含め、自分に合う環境を探すヒントにしてくださいね。
外向型(E)タイプ|対話の多い現場で力を発揮
外向型(E)タイプは訪問看護や救急など、行動量と対人場面が多い環境が向いています。
患者やチームと関わることで、モチベーションが保ちやすいタイプです。
内向型(I)タイプ|少人数で落ち着いて向き合える環境
内向型(I)タイプは、病棟や療養、精神科など、一つの関係性を丁寧に積み重ねられる職場が合っています。
一人の時間が確保できると、本領発揮するタイプといえそうです。
感覚型(S)タイプ|手順・観察を活かせる仕事
感覚型(S)タイプは、基本に忠実なケアや、細かな変化を拾う力が強みです。
内科、外科病棟、回復期など、日常的な看護スキルが活きる職場で、より一層輝きを放ちます。
直観型(N)タイプ|改善や提案が評価される環境
直観型(N)タイプは、教育、管理、企画系業務に向いています。
「こうしたらもっと良くなる」が自然に湧くタイプです。
委員会活動や後輩指導でも活躍しやすい傾向にあります。
思考型(T)タイプ|判断と整理の場面で頼られる
思考型(T)タイプは、ICUや手術室など、根拠に基づく論理的判断が求められる領域が得意です。
緊急対応が必要な場面でも、冷静さを保ちやすいタイプといえます。
感情型(F)タイプ|気持ちに寄り添うケアで信頼獲得
感情型(F)タイプは、小児、緩和ケア、地域包括など「安心感」を届ける現場で真価を発揮します。
患者・家族の橋渡し役としても、頼られるタイプです。
判断型(J)タイプ|計画性が求められる働き方
判断型(J)タイプは、病棟管理やチームの業務調整など、“段取り力”が武器になります。
予定通り進めたい気質を活かして、管理職へのキャリアも考えやすいタイプです。
知覚型(P)タイプ|変化がある環境で柔軟に対応
知覚型(P)タイプは、救急外来、応援ナース、単発派遣など、状況に応じて動き方を変えられる職場が向いています。
自由度が高い環境が得意で、そういった職場では疲れにくいタイプです。
MBTIタイプ別|人間関係のつまずきポイント
MBTIタイプの違いは、チームで働く看護師にとって大きなヒントになります。
苦手な関わり方を知っておくと、不必要なストレスを避けられることも多いです。
4つの性格軸ごとに、人間関係で起きやすい課題をまとめました。
どのタイプにも長所と課題があり、相手の背景を知ることで関係性は大きく変わります。
違いを否定せず、お互いの強みを活かせるチームづくりを目指しましょう。
外向型(E)と内向型(I)|コミュニケーション量の差
外向型(E)のつまずきポイント
人との会話が減ると「距離を置かれたかも」と感じやすく、つい空気を読みすぎてしまう。
内向型(I)のつまずきポイント
雑談が続くと気持ちが散って疲れやすい。一人の時間でバランスを整えることが大切。
感覚型(S)と直観型(N)|価値観の違い
感覚型(S)のつまずきポイント
現実的な提案をしたつもりが「慎重すぎる」と誤解されることも。
直観型(N)のつまずきポイント
先を見据えた意見が「理想論」に聞こえてしまい、浮いてしまう場面がある。
思考型(T)と感情型(F)|伝え方のすれ違い
思考型(T)のつまずきポイント
合理的な言葉が冷たく響いてしまう。伝える順序にひと工夫を。
感情型(F)のつまずきポイント
相手を傷つけたくなくて意見を抑えがち。感情より事実から話す意識が助けになる。
判断型(J)と知覚型(P)|仕事の進め方の差
判断型(J)のつまずきポイント
予定変更が続くとペースが乱れやすい。ゆとりのあるスケジュール設計がカギ。
知覚型(P)のつまずきポイント
自由度が高いほど力を発揮するが、締切が曖昧だと後回しにしがち。小さな区切りを決めると安心。
MBTIは自己理解×キャリア成功のコツ
MBTIは「向き・不向きの決定」ではなく、働き方を整えるためのヒントです。
自分の傾向を言語化できると、強みが生きる場面が増え、ストレス要因を早めに回避できます。
明日からの業務に落とし込めるコツを3つにまとめました。
強みを活かせる働き方を選ぶ
自分の得意が最大化される場を選ぶと、パフォーマンスは自然に安定します。
自分の得意が発揮できる場に立つと、自然と成果と満足度が上がります。
ここではMBTIの4つの性格軸ごとに、看護師として力を発揮しやすい環境を整理しました。
自分の傾向と照らし合わせながら読んでみてください。
自分の強みが活かせる職場を意識することは、働きやすさやキャリア継続の第一歩です。
得意を伸ばす選択が、看護を長く楽しむ力になります。
コミュニケーションの形(E / I)
E(外向型)は、人との会話やチームワークがエネルギー源。外来・救急・訪問看護など、対話が多い現場でやりがいを感じやすいタイプです。
I(内向型)は、少人数で信頼関係を深める働き方が向いています。療養・精神科・リハビリなど、一人ひとりとじっくり関われる環境で力を発揮します。
情報処理の形(S / N)
S(感覚型)は、現場の変化に敏感で、確実な手順を重視します。内科・外科・回復期など、マニュアルやフローが整った職場で安心して働けます。
N(直観型)は、新しい仕組みや改善提案に意欲的。教育・委員会・マネジメント業務など、発想を活かせる場面で伸びるタイプです。
意思決定の形(T / F)
T(思考型)は、客観的な根拠や優先順位づけを得意とし、冷静な判断でチームを支えます。ICUや手術室など、緊急対応や正確な判断が求められる場に強いタイプ。
F(感情型)は、人の気持ちに寄り添うケアが自然にできるタイプです。小児科や緩和ケア、地域包括など、安心感を生むコミュニケーションが活きる職場が向いています。
進め方の形(J / P)
J(判断型)は、計画的に物事を進めることで力を発揮。病棟管理やチームリーダー業務など、スケジュール調整が必要な役割に向いています。
P(知覚型)は、変化のある状況で柔軟に対応できるタイプ。応援ナースや単発勤務など、現場ごとに流れが異なる働き方で生き生きとします。
苦手環境を回避 or 補完する方法
苦手な環境を完全に避けるのは難しくても、工夫次第で負担を軽くすることは可能です。
自分のタイプを理解しておくと、「避ける」か「補う」かの判断がしやすくなります。
“自分の特性を活かして、少しずつ働き方をチューニングしていく”、それが、長く続けられるキャリアの土台につながるのです。
トリガーの可視化
疲れやすい時間帯・場面・人間関係の傾向をメモしておくことで、ストレスの原因を早めに察知できます。
例えば、Eは人と関われない時間が続くと気持ちが沈みやすく、Iは雑談やノイズが多い環境で集中しにくくなる傾向があります。
ミニ対策を取り入れる
小さな工夫でも、消耗を減らすことができます。
Eは同僚と短く話す時間をつくる、Iは休憩中に静かな場所で一人時間を確保するなど、自分の“回復スイッチ”を明確にしておくと安心です。
役割の調整でバランスを取る
Sは手順や記録の整備係として貢献し、Nは改善や新しい提案の下地づくりで力を発揮できます。
チーム内で役割を少し変えるだけでも、働きやすさが変わります。
伝え方を工夫する
Tは根拠に一言の配慮を添えることで、冷たく聞こえにくくなります。
Fは気持ちを大切にしつつ、先に要点を伝えると、誤解を防ぎやすくなります。
「どう伝えるか」を意識するだけで、人間関係の摩擦が減るのでおすすめです。
環境をリデザインする
Jはタスクを可視化し、優先順位を明確にしておくと安心。
Pはバッファ(余白)を設けておくことで、変化にも柔軟に対応できます。
環境を少し整えるだけで、同じ業務でも疲れ方が大きく変わります。
転職・配置変更にMBTIをどう活かす?
自己理解を職場選びや配置転換に活かすと、ミスマッチを減らしやすくなります。
MBTIは「適性診断」ではなく、「働き方のヒント」として活かすのがコツです。
希望条件を言語化する
自分の得意なコミュニケーション・情報処理・意思決定・進め方を整理しておきましょう。
例)Eなら人と関わる機会が多い職場、Iなら落ち着いて業務に集中できる環境など。
現職で小さく試す
いきなり転職する前に、配置替えや役割変更など“小さな実験”を行うことで、自分に合う条件を明確にできます。
求人を読み解く
求人情報では「業務フロー」「チーム人数」「教育体制」「急変対応の頻度」など、働き方の傾向を読み取ることがポイントです。
自分の特性に照らして、「居心地のよさ」をチェックしましょう。
面談での伝え方
「強み×活かし方」「苦手×補完策」を具体例で伝えられると好印象です。
“自己理解のある人”は、採用担当者にも信頼感を与えます。
キャリア相談・転職ならスーパーナース
看護師専門の人材支援サービス「スーパーナース」なら、幅広い求人情報からあなたにぴったりの職場をご提案することが可能です。
自分の性格傾向にマッチした職場環境で、キャリアを成功させるカギが見つかります。
スーパーナースでは、経験豊富なコーディネーターに相談することもできるので、効率の良い就職活動が実現します。
まずは、お気軽にご相談ください。
まとめ

MBTIは「向いていない」を探す診断ではありません。
自身の強みとストレスの傾向を理解することで、無理なく続く働き方が見つけやすくなります。
小さな違和感や疲れやすさを見過ごさず、より心地よい看護の形を選べる未来を一緒に描いていきましょう。
MBTIに関するよくある質問
MBTIタイプは変わることがありますか?
- 大きな環境変化や経験によって、行動の傾向が変わる場合があります。定期的な自己理解の見直しがおすすめです。
看護師に向いていないタイプはありますか?
- ありません。どのタイプにも看護で活きる強みがあります。ポイントは、自分の得意・苦手を把握し、環境を整えることです。
MBTIは無料で診断できますか?
- Webで無料の簡易診断が利用できます。精度の高い診断は専門家による有料版もあります。
職場と性格が合わないことはありますか?
- 職場の環境や人間関係、さまざまな要因で「合わない…」と思う人がいます。配置変更や業務改善、職場相談など“今の環境でできる対策”があります。状況によっては転職を検討することも選択肢です。
MBTIは採用に影響しますか?
- 診断結果だけで、採用・不採用が決まることは通常ありません。得意な面と課題の補い方を説明できると好印象です。
同僚とのコミュニケーションが辛いときの対策は?
- 性格軸の違いが原因の可能性があります。「違いを知る」ことが改善の第一歩。必要に応じて相談の場を持つのも有効です。
MBTIをキャリア選択に活かすには?
- 強みが生きやすい職場を選ぶことがポイントです。迷ったら、看護師特化のキャリア支援に相談することで、最適な選択肢を見つけやすくなります。

スーパーナース編集部
看護師の働き方を支援して30年の株式会社スーパーナース。
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