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心電図モニター装着中の看護

心電図モニター装着中の看護

心電図モニターは、心拍の変化や不整脈、循環動態の乱れをいち早く察知するために、欠かせない医療機器です。

現場では、「モニター心電図」や「モニター」などと呼ばれるケースが多いです。

特に急性期の患者さんでは、波形の変化が状態悪化のサインになることも多く、看護師の“気づき”が安全なケアを支えます。

この記事では、モニター装着中の患者さんを看護する際に押さえておきたいポイントを、実践的に分かりやすくまとめました。

新人〜中級者の方でも、今日から使える基本を整理していきます。

目次

心電図モニターの目的

心電図モニターは、心臓の電気的な活動をリアルタイムで把握することで、異常の早期発見につなげるためのツールです。

心拍数やリズムの乱れ、不整脈の出現、ST変化など、循環動態の重要なサインを継続的に観察できます。

特に急変リスクのある患者さんでは、わずかな変化が重大な兆候になることもあり、モニターによる継続監視は安全管理の要となります。

波形だけに注目するのではなく、症状・バイタル・全身状態と合わせて評価することで、より正確な判断につながります。

心電図装着中の看護|基礎編

心電図モニターを安全に活用するためには、“波形を読む”以前に、装着状態やアラームの意味を正しく理解することが大切です。

ここでは、日々の観察で押さえておきたい基本のケアを4つのポイントに分けて整理します。

電極の貼り直し|汗・体動への対応

電極のズレや剥がれは、アラームの誤作動や波形の乱れにつながり、患者さんの状態評価を難しくします。

特に発汗・体動・皮膚の乾燥があると接触不良を起こしやすいため、定期的な貼り直しが必要です。

貼付部位は清潔・乾燥を保ち、必要に応じて前処置(皮脂の拭き取り・軽いシェービング)を行います。

波形が乱れた際は、機器の故障よりも、“まず電極”を疑うと正確な評価につながります

皮膚トラブルの予防

電極は長時間同じ部位に貼付されるため、発赤・かゆみ・接触性皮膚炎が起こりやすくなります。

貼付部位の観察は、バイタルチェックと同じタイミングで習慣化するのがポイントとなるでしょう。

皮膚の弱い方には、刺激の少ない電極や保護フィルムの併用が有効です。

また、貼付部位を定期的にローテーションすることで、局所の負担を軽減できます。

皮膚状態を整えることは、モニター精度の維持にもつながります。

アラームの種類を理解する

心電図モニターのアラームは、大きく「心拍数の上下限」「不整脈検出」「ST変化」に分類されます。

まず、何のアラームかを把握することが的確な対応につながります。

HRアラームは循環動態の変化、不整脈アラームは命に関わる波形異常の可能性を示唆します。

STアラームでは、虚血の有無を早期に確認する必要があります。

アラーム音に過度に反応するのではなく、“優先度を理解して落ち着いて対処する”ことが重要です。

「患者→波形→機器」の順で確認する

アラームが鳴った際、もっとも重要なのは“波形を見る前に患者さんを見る”ことです。

意識レベル・呼吸・顔色など、全身状態の変化が最優先で確認すべき情報となります。

そのうえで、波形やアラームの種類を評価し、最後に機器や電極の接触状態をチェックします。

この順番を踏むことで、危険な状況を見逃さず、誤作動への無駄な対応を減らすことができます。

これは、新人のうちから身につけたい基本姿勢といえるでしょう。

 

参考文献

厚生労働省|心電図モニタの取扱い時の注意について

心電図装着中の観察ポイント

心電図モニター装着時の4つの観察ポイントの図解

心電図モニターを使用する際は、難しい波形読解よりも「変化にいち早く気づく視点」が大切です。

ここでは、装着中の患者さんを観察するうえで新人〜中級者がまず押さえておきたい4つのポイントを紹介します。

日常の観察に取り入れるだけで、異常の早期発見につながります。

1.心拍数の急な変動

心拍数(HR)の急激な上昇や下降は、循環動態の変化や不整脈の前兆であることがあります。

特に、安静時に突然HRが上がる場合は疼痛・不安・発熱・脱水などの身体的ストレスが背景にあることも少なくありません。

逆に急な低下は、迷走神経反射や徐脈性不整脈を疑います。

波形を見る前に、まず患者さんの意識・呼吸・訴えを確認することで、変化の原因に早く近づくことが可能です。

2.RR間隔(リズムの整い具合)

RR間隔とは、心電図でQRSとQRSの間の距離を指し、リズムの規則性を確認する基本項目です。

RR間隔が不規則な場合は、心房細動などの不整脈の可能性があります。

逆に規則的でも「急に間隔が伸びる」「間隔が揃わない」といった変化があれば、心室性期外収縮や徐脈性リズムを疑います。

難しい波形解析をしなくても、RRの“整い具合を見る”だけで状態の変化に気づきやすくなります。

3.STの上昇・下降(胸痛時に特に注意)

ST部分の上昇や下降は、心筋虚血のサインである可能性があり、胸痛を訴えている場合は、特に注意が必要です。

ST上昇は急性冠症候群、下降は虚血や電解質異常を示唆します。

まずは、胸痛の有無や強さの変化を確認し、バイタル測定とともに速やかに報告を行います。

細かい数値や基準を覚える必要はなく、「患者+STの変化」のセットで観察することが重要です。

4.QRS幅の急な変化(広くなる=要注意)

QRS幅が突然広くなる場合は、心室性不整脈や伝導障害が関与していることがあります。

特に、新たに出現した幅広いQRSは、心室性期外収縮の頻発や心室頻拍の前兆として注意が必要です。

波形が急に“太って見える”と感じたら、まずは患者さんの状態(意識・脈拍・血圧)を確認し、速やかに医師へ報告します。

専門的な波形読解が難しくても、この“形の変化”だけで、異常に気づける場面は多くあります。

注意すべき“よくある”3つの異常&エラー

よくある心電図の異常とエラーの図解

心電図モニターでアラームが鳴っても、すべてが“危険な波形”とは限りません

体動や電極不良など、よくあるエラーでも波形は大きく乱れます。

ここでは、装着中によく遭遇する4つのケースを簡潔に整理します。

落ち着いて見極められるようになると、無駄な対応が減り、本当に危険な変化に集中できるようになります。

1.アーチファクト(体動・電極剥がれ)

アーチファクトは、患者さんの体動、咳、筋緊張、電極の剥がれなどによって波形が乱れる“ノイズ”です。

不整脈のように見えることもあり、新人看護師がもっとも戸惑いやすいポイントです。

波形がギザギザ・不規則に乱れたときは、まず患者さんの体位や電極の接触を確認します。

落ち着いて確認すると「異常波形」ではなく、単なる接触不良だったというケースは非常に多いパターンです。

2.頻脈/徐脈(脈と意識レベルを確認)

頻脈や徐脈のアラームが鳴ったときは、波形よりも先に“患者さんの状態”を確認することが最優先です。

意識レベルの低下、脈拍の触れにくさ、呼吸状態の変化があれば、早急な対応が必要になります。

一方で、痛み・不安・体動・発熱などが原因で、一時的に心拍数が変動している場合もあります。

まずは、全身状態を観察し、そのうえで波形を評価することで、危険な状況を確実に見極められます。

3.PVC(期外収縮)の増加

PVC(心室性期外収縮)は、単発なら生理的に見られることもありますが、連発する・頻度が増えるといった変化は要注意のサインです。

RR間隔の乱れやQRSの形が変化することで気づくことが多く、症状の有無と合わせて評価が必要です。

胸部症状や血圧低下を伴う場合は、速やかに報告・記録を行います。

PVC散発や頻発、3連発以上のショートラン(short run) が見られたら、状態悪化の前兆と捉えて慎重に観察しましょう。

不整脈アラーム時は“まず患者を見る”

不整脈アラームは緊張感のある場面ですが、最初に確認すべきは“患者さん自身”です。

顔色、意識、脈拍、呼吸の変化を観察することで、波形の異常が本当に危険な状態なのか、エラーや軽度の変動なのかを判断しやすくなります。

波形に気を取られてしまうと、肝心な臨床症状を見逃すリスクがあるので要注意です。

「患者→波形→機器」の順番を徹底することが、安全な急変対応につながります。

STアラーム時の基本対応

  1. 胸痛・息苦しさなどの症状を確認する
  2. 意識レベル・呼吸状態・脈拍を観察する
  3. 血圧・SpO₂を含むバイタルを測定する
  4. ST変化の持続・程度を確認する
  5. 速やかに医師へ報告する

STアラームは、心筋虚血や急性冠症候群など重大な疾患のサインである可能性があります。

まず、胸痛や息苦しさなどの自覚症状を確認し、意識レベルや呼吸状態を含めて全身状態を評価します。

そのうえで、血圧・SpO₂・脈拍を測定し、循環動態の変化がないかを把握します。

STの変化は一時的な揺らぎなのか、持続しているのかで緊急度が変わるため、必ず“持続性”を確認します。

異常が疑われる場合は、状況を簡潔にまとめて速やかに医師へ報告し、必要な処置につなげることが重要です。

併せて見るべき“他のデータ”

心電図モニターの波形変化を評価するときは、心臓だけでなく“全身の情報”と組み合わせて判断することが大切です。

SpO₂の低下は低酸素状態、血圧の急変は循環不全の兆候として、心電図と併せて確認する価値があります。

また、呼吸数・意識レベルの変化、尿量や皮膚の冷感なども循環動態に影響する重要な指標です。

波形だけを見て判断すると、エラーや軽度の変動に振り回されることがあります。

複数のデータを総合的に見ることで、より安全で確実な状態評価が可能になります。

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心電図装着中の看護に関するよくある質問

Q1

電極はどれくらいの頻度で交換すべきですか?

  • 電極の交換は、2~3日に1回の頻度で行うのが一般的です。しかし、汗や体動で剥がれやすいため、電極の確認は毎日行います。また、皮膚トラブルがある場合は、状況に応じて、部位変更や保護材の使用を検討します。
Q2

アラームが鳴ったとき、まず確認すべきことは何ですか?

  • 波形より先に“患者さんの状態”(意識・呼吸・脈拍)を確認します。誤作動も多いため、患者→波形→機器の順で判断するのが基本です。
Q3

PVC(期外収縮)が単発で出る場合は異常ですか?

  • 単発のPVCは生理的に見られることが多く、症状がなければ経過観察で問題ないことがほとんどです。ただし、散発・連発・頻発が続く場合は注意が必要です。
Q4

STの軽度変動はすべて報告すべきですか?

  • 一時的な変動で症状がなく、数秒で元に戻る場合は経過観察で足ります。しかし、胸痛を伴う・持続する・明らかに変化幅が大きい場合は早急な報告が必要です。
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この記事を書いた人は
スーパーナース編集部

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看護師の働き方を支援して30年の株式会社スーパーナース。
派遣や転職をはじめとした就業経験豊富な看護師と編集スタッフが「看護師のはたらく」に関する情報を日々お届けします。

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