ヘマトクリットは、血液の状態を把握するうえで重要な指標の一つです。その値の変化から、患者さんの体調や疾患リスクを評価することが可能です。
本記事では、ヘマトクリットの基準値や看護師がヘマトクリット値を活用するポイントについて解説します。
ヘマトクリットとは?
ヘマトクリット(Hct)は、血液全体に占める赤血球の容積比をパーセンテージ(%)で表したものです。
循環動態の評価や、貧血・多血症などの疾患の診断・管理において重要な役割を果たします。
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ヘマトクリットの基準値
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- 男性: 40~50%
- 女性: 35~45%
女性は生理的要因により男性よりも低めの範囲が設定されています。
さらに、妊娠中は血液量の増加によりHct値が低下しやすく、更年期ではホルモンバランスの変化が影響を及ぼすため、ライフステージに応じた適切な対応が重要です。
なお、年齢や検査機関によって若干の違いがある場合があります。
ヘマトクリット値の変動と主な原因とは?
ヘマトクリット値の上昇とその原因
Hctが高値を示す場合、血液の濃縮や赤血球の増加が関与しています。代表的な原因は以下のとおりです。
- 脱水
- 多血症
- 低酸素血症
ヘマトクリット値の低下とその原因
Hctが低値を示す場合、赤血球産生の低下や血液の希釈が関与しています。代表的な原因は以下のとおりです。
- 貧血
- 出血
- 輸液による血液希釈
Hct値は年齢や生活習慣の影響を受け、運動習慣・喫煙・高地生活などが高値の要因となる一方で、栄養不足や慢性疾患が低値の要因となります。そのため、看護師は患者の背景を考慮し、適切な評価と対応を行なうことが重要です。
押さえておきたい評価と対応のポイント
1出血の有無・程度の把握
術後や外傷、消化管出血などの患者では、Hctの低下が隠れた出血を示している場合があります。出血直後はまだHctが下がっていなくても、数値の変化を経時的に追うことが重要です。
2脱水や水分バランスの評価
高齢者や発熱・下痢などで脱水リスクが高い患者では、Hctの上昇とともに口渇、皮膚乾燥、尿量の減少などの症状をあわせて観察し、補液の必要性を早期に判断する材料になります。
3貧血のモニタリング
Hctは貧血の有無や重症度を把握するうえで重要な指標です。特に慢性疾患や栄養不足、鉄欠乏性貧血などでは、ヘモグロビン(Hb)とともにHctも低下します。
また、治療効果の確認にも使えます。鉄剤投与後や輸血後にHctが上昇していれば、治療が奏功していると評価できます。
4輸血や点滴治療の効果判定
赤血球製剤 (RBC)を輸血した場合、Hctがどれだけ改善したかを確認することで、輸血の効果を客観的に評価できます。同様に、大量輸液後のHctの低下が急激であれば「希釈性貧血」なども疑われます。
「輸血はしたがHctが思ったより上がっていない」というケースでは、継続出血の可能性も考慮に入れて観察を強化する必要があります。
5血栓リスクの察知
Hctが高値の場合、血液が濃くなり、血栓ができやすい状態になります。特に真性多血症や慢性肺疾患の患者では、血液が粘稠になっていることがあり、脳梗塞や肺塞栓のリスクがあります。
四肢のしびれ、冷感、腫れなどの症状を見逃さず、早期対応につなげましょう。
まとめ
ヘマトクリットは、患者の循環動態や病態の評価に欠かせない重要な指標です。 その変動を的確に把握し、ほかの検査結果や臨床症状と組み合わせながら総合的なアセスメントを行なうことが、より良い患者管理につながります。 日々の観察を大切にしながら、適切な判断と対応を心がけましょう。
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スーパーナース編集部
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