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スタンダードプリコーション(標準予防策)とは?【PPE着脱順を含む完全ガイド】

目次

スタンダードプリコーション(標準予防策)とは?

スタンダードプリコーション(標準予防策)とは、すべての患者に対して標準的に実施される感染予防策のことです。患者および医療従事者の感染リスクを減少させることを目的としています。
 
この予防策では、

 

湿性生体物質
  • 血液
  • 体液
  • 汗以外の分泌物
  • 排泄物
  • 創傷のある皮膚
  • 粘膜

には感染性があるとみなし、適切な対応を行ないます。

この予防策が看護現場で必要とされる理由は、病原体の多様性と予測困難性にあります。個別の予防策に頼るのではなく、包括的かつ一貫した対策を導入することで、医療従事者と患者の双方を効果的に保護できます。スタンダードプリコーションはすべての医療行為に適用されるため、効率的かつ効果的な感染対策が可能です。

歴史

スタンダードプリコーションは、 米疾病予防管理センター( CDC ) が1996年に導入した感染予防策です。もともと1985年にCDCが「ユニバーサルプリコーション」を提唱し、血液を介した感染防止に重点を置いていましたが、これを発展させ、汗を除くすべての体液・分泌物、粘膜、傷がある皮膚にも適用範囲を拡大しました。

現在では多くの医療機関がこの原則を採用し、手指衛生、個人防護具の使用、環境消毒、医療器具の適切な管理を標準的な感染対策として実施しています。

感染経路の分類

感染経路とは、病原体が宿主から別の人へ伝播する経路のことです。感染予防には、各経路の特性を理解し、それに応じた対策を講じることが重要です。

感染経路 特徴
接触感染 汚染された手や物体を介して病原体が伝播 ノロウイルス、MRSA(耐性菌)、疥癬など
空気感染 病原体が空気中を漂い、長時間感染力を保持 結核、麻疹、水痘など
飛沫感染 咳やくしゃみの飛沫を吸い込むことで感染 インフルエンザ、COVID-19、風疹など

スタンダードプリコーションを徹底解説

01手指衛生の基本

手指衛生のタイミング

  1. 1.患者・利用者に触れる前
  2. 2.清潔・無菌操作を行なう前(例:点滴の接続や傷の処置)
  3. 3.体液や血液に触れた後(例:排泄介助、傷の処理)
  4. 4.患者・利用者に触れた後
  5. 5.患者・利用者の周囲の環境に触れた後(例:ベッド柵、リネン)

手指衛生の種類

  • 目に見える汚れがある場合は、石けんによる手洗いをする。
  • 目に見える汚れがない場合は、消毒薬による手指消毒をする。

手洗い
 

02個人防護具(PPE)の選択と使用方法

感染予防において、手袋やマスク、ゴーグル、ガウンといった個人防護具(PPE)の適切な使い分けは非常に重要です。それぞれのPPEには特徴があり、さまざまな感染経路から医療従事者を保護する役割を果たしています。

PPEの種類 特徴 対象となる主な感染経路
手袋 皮膚や粘膜との直接接触を防ぐ 接触感染
マスク 飛沫や微粒子の吸入を防ぐ 飛沫感染、空気感染(N95マスクなど高性能マスクの場合)
ゴーグル 目を通じた飛沫や液体の侵入を防ぐ 飛沫感染
ガウン 衣服を介した汚染を防ぐ 接触感染

正しい装着手順

PPEの装着

1

手指衛生

  • 石けんと流水による手洗い、または消毒薬による手指消毒を行ないます。
2

ガウン

  • 袖を通し、背中のひもを結びます。
3

マスク

  • 鼻と口をしっかり覆い、隙間ができないように調整します。
4

ゴーグルまたはフェイスシールド

  • 目や顔を守るために装着する。
5

手袋

  • 手首が露出しないよう、ガウンの袖口を覆う形で着用する。

正しい脱衣手順

PPEの脱衣

1

手袋

  • 外側が汚染されている可能性が高いため、最初に外す。
2

ゴーグルまたはフェイスシールド

  • 汚染面に触れないように外す。
3

ガウン

  • 首と腰の結び目を解き、内側を外側に丸めながら脱ぐ。
4

マスク

  • ゴム紐を持って外し、表面には触れないようにする。

 

手袋の適切な使用タイミングと交換の基準

  • 各患者のケアや作業ごとに新しい手袋を使用し、使用後はすぐに交換する。
  • 手袋が破損したり、汚染された場合は、速やかに新しい物と交換する。
  • 手袋の装着前後には必ず手指衛生を行なう。
  • 手袋は使い捨てにし、再利用しない。

 

03呼吸器衛生/咳エチケットの実践

飛沫感染を防ぐための咳エチケットは、病院や医療施設において非常に重要な役割を果たします。具体的な対策としては、以下の方法が効果的です。

①咳エチケットの徹底

咳をする時は口元を覆う。 必要に応じてティッシュを使用したり、マスクを着用する。

②定期的な教育と訓練

医療従事者や利用者、患者に対して咳エチケットの重要性と具体的な実践方法を定期的に教育する。

③職場での啓発

施設内の目立つ場所に咳エチケットの手順を示したポスターやサインを掲示し、常に意識できるようにする。

④手指衛生の実施

咳やくしゃみで分泌物に触れた後は手洗いやアルコール消毒を行なう。

⑤対人距離の維持

患者および同僚との適切な距離を確保する。
 

04患者の配置と環境管理

患者の適切な配置と部屋割りを管理するのは、感染症の拡大を防止し、安全な医療環境を維持するために不可欠です。
基本的な配置方法

配置方法 特徴 使用されるケース例
個室 一人部屋で、感染リスクがある患者をほかと分離 易感染状態、拡大予防の協力が得られない患者、耐性菌保有者など
陰圧室(空気感染隔離室) 部屋の空気が外に漏れにくい構造 空気感染(結核など)
同一病室内のゾーニング カーテンや動線を工夫し、清潔区域・汚染区域を区別 感染力が低めで個室が確保できない場合
コホート隔離 同じ感染症の患者を一つの病室や病棟にまとめる インフルエンザ、ノロウイルスなど

働く看護師
 

05患者ケア器具の取り扱い

患者ケアに使用する器具や機器は、感染拡大を防ぐために衛生的に取り扱うことが重要です。まず使用する器具は、可能な限り患者ごとに専用のものを使用し、やむをえず共有する場合は、使用のたびに清拭・消毒を行ないます。

また、器具は使用後すぐに洗浄・消毒・滅菌などの処理を行ない、汚染状態のまま放置しないことが基本です。

器具の洗浄・消毒については、種類や使用目的に応じて「洗浄→消毒→滅菌」などの段階を正しく選択し、マニュアルに沿って対応します。再利用する器具については、処理後に清潔な状態で密閉保管するか、専用の清潔な棚に収納することで再汚染を防ぎます。

さらに、手袋や吸引チューブなどの使い捨て器具は1回限りの使用とし、適切な方法で速やかに廃棄することが求められます。器具の取り扱いは、患者と医療者双方の安全を守るうえで欠かせない感染対策の一つです。
 

06周囲の環境消毒と清潔保持

病院の環境整備は、接触を通じた感染を防ぐために非常に重要です。特にドアノブやベッド柵、ナースコールボタンなどの「高頻度接触面」は、病原体が付着しやすいため、定期的な消毒が欠かせません。

環境整備の基本ポイント
1. 高頻度接触面の消毒

多くの人が触れる場所はこまめに清掃・消毒する。

2. 汚染時の即時対応

嘔吐物や血液などは速やかに処理し、汚染拡大を防止する。

3. 清掃手順の徹底

清潔→汚染の順に、使い捨てクロスや専用モップを使用する。

4. 清掃頻度の設定

場所ごとに適切な頻度・方法で管理する。

5. 職員全体での取り組み

看護師含め、全スタッフが意識して関わる。

病室で患者さんと話す看護師
 

07リネンの取り扱い

病院におけるリネン(シーツや枕カバー、患者衣など)の取り扱いは、感染拡大を防ぐための重要な対策の一つです。リネンは患者の体液や病原体が付着することがあり、不適切な扱いは感染の原因になります。

リネン取り扱いの基本ポイント
1. 汚染・非汚染の区別を徹底

清潔なリネンと使用済みリネンは別の場所・容器で管理する。

2. 使用済みリネンの取り扱い

防水性がある袋や専用容器にすぐに入れる。

3. 血液や体液で著しく汚染されたリネン

施設のマニュアルに沿って適切に分別・処理する。

4. 洗濯・再利用時の衛生管理

洗濯前に感染症リスクの有無を確認し、適切な洗浄・消毒方法を選択する。
再使用する場合も、清潔に保管し、再汚染を防ぐ。
 

08安全な注射手技

病院における「安全な注射手技」は、患者と医療従事者の双方を感染リスクから守るために欠かせない感染対策の一環です。特に注射・点滴などの処置では、血液を介した感染(HBVやHCV、HIVなど)のリスクが伴います。

安全な注射手技の基本ポイント
1. 清潔操作を徹底する。
2. 注射器・針の使い回しをしない。
3. 針刺し事故を防止する。
  • 使用済みの針はリキャップしない(片手でのリキャップは禁止)。
  • すぐに注射針回収容器に廃棄し、針の置き忘れを防ぐ。
4. 処置後の手指衛生と適切な感染性廃棄物を処理する。

 

09特別な腰椎穿刺時の感染予防策

腰椎穿刺は、脳脊髄液の採取や医療処置のために腰椎部に針を挿入する手技であり、無菌的に行なわれます。 脊髄内や硬膜外にカテーテルを挿入したり薬剤を注入したりする時には(ミエログラム、脊髄麻酔または硬膜外麻酔など)サージカルマスクを着用します。
 

 

参考文献

国公立大学附属病院感染対策協議会 「病院感染対策ガイドライン2018年版 (2020年3月増補版)」(2025年6月確認)

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看護師の働き方を支援して30年の株式会社スーパーナース。
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