採血は医療現場において欠かせない基本的な手技であり、患者の健康状態を正確に把握するために重要な役割を果たします。適切な採血手技を習得することで、検査結果の信頼性が向上し、患者ケアの質の向上にも直結します。本記事では、間違えやすい採血スピッツの種類とその採血順序について確認していきましょう。
採血スピッツの種類とそれぞれの特徴
採血スピッツには複数の種類があり、それぞれ担当する検査項目が異なります。以下に、主な採血スピッツの種類と対応する検査項目をまとめました。
スピッツの種類 | 含まれる薬剤 | 担当検査項目 |
---|---|---|
生化学スピッツ | 凝固促進剤、分離剤 | 電解質、栄養状態、肝機能、腎機能など |
凝固スピッツ | クエン酸ナトリウム(抗凝固剤) | PT・APTTなどの凝固機能検査 |
血算スピッツ | EDTA(抗凝固剤) | 赤血球・白血球・血小板数など |
血糖・HbA1Cスピッツ | 抗凝固剤、糖分解阻害剤 | 血糖値、HbA1c |
各スピッツの注意点
生化学スピッツ
組織液混入の影響が少なく、最初に使用することでほかの検査項目への干渉を防止します。
凝固スピッツ
血液凝固の正確な測定を行なうため、採血の初期段階で使用を避け、適切なタイミングで使用します。
血算スピッツ
EDTA(抗凝固剤)が含まれており、血液と均等に混ざるよう注意が必要です。混合不良は検査結果に影響を及ぼします。
血糖・HbA1Cスピッツ
ほかの検査項目に比べて採血順による影響が少なく、柔軟に採血手順に組み込むことが可能です。ただし、食事の影響を受けるため、採血前の食事管理が重要になります。
採血スピッツの正しい順番とは?
採血スピッツの正しい順番を守ることは、検査結果の誤差を防ぎ、正確な診断につなげるために不可欠です。ここでは、主な採血スピッツの使用順について詳しく確認していきます。
真空管採血での順番
真空管採血では、生化学スピッツ→凝固スピッツ→血算スピッツ→血糖・HbA1Cスピッツ→その他の順で使用します。
理由
採血直後は微量の組織液が混入する可能性があります。組織液には凝固因子が含まれており、凝固時間の測定に影響を与えるため、最初に凝固スピッツを使用するのは避けます。一方、生化学検査はこの影響を受けにくいため、最初に採取することでほかの検査項目への干渉を防ぐことができます。
また、凝固検査では一定量の血液が必要となるため、採血量不足を防ぐためにも早めの採取が推奨されます。
血糖・HbA1Cはほかの検査項目に比べて順番による影響が少ないため、最後に採取します。
補足
真空管採血の採取順には、明確なエビデンスがあるわけではありません。
院内ルールとして順番を定めている施設もあるため各施設の基準に従いましょう。
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翼状針で真空管採血をする場合の注意点
- 翼状針を使用して真空管採血を行なう場合、最初に採取するスピッツにはチューブ内の空気(約0.4mL)が混入します。この影響により、正確な血液量が必要な凝固検査や赤沈検査では、血液量が不足し、検査ができなくなる可能性があります。対応策として、先にダミーの生化学スピッツを使用し、チューブ内を血液で満たしておく方法があります。院内ルールが定められている場合は、各施設の基準に従いましょう。
シリンジ採血での順番
シリンジ採血では、凝固スピッツ→血算スピッツ→血糖・HbA1Cスピッツ→生化学スピッツ→その他順で使用します。
理由
シリンジ採血では血液の前後の区別がないため、凝固を防ぐことを最優先に考えて採取を行ないます。採血後、血液は自然に凝固し始めるため、凝固スピッツはできるだけ早めに採取することが重要です。その後は、抗凝固剤が含まれているスピッツを優先的に使用します。生化学検査は血液が凝固しても影響が少ないため、最後に採取するのが一般的です。
まとめ
採血スピッツの適切な使用順を守ることは、検査の精度を確保し、患者への負担を軽減するために不可欠です。採血前には施設のルールを確認し、正しい手順を徹底することで、信頼性の高い検査結果を得ることができます。日々の業務ではこれらのポイントを意識し、安全で正確な採血を実施しましょう。
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スーパーナース編集部
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