看護師が日常業務で頻繁に行なう医療行為の一つが皮下注射です。
この記事では、看護師さん向けに皮下注射の基本手技をはじめ適応薬剤、注射部位の選択ポイント、刺入角度、注意点 などを詳しく解説します。
臨床現場で安全・確実に実施する際の参考にしてください。
皮下注射とは?
皮下注射は、皮膚と筋肉の間にある皮下組織に薬液を注入する注射方法です。筋肉注射や静脈注射に比べて吸収速度が緩やかなため、持続的な効果が求められる場合に適しています。主にワクチンやインスリンの投与に用いられます。
皮下注射は英語で「Subcutaneous injection」といい、「S.C.」または「SC」と略されます。
皮下注射でよく使う部位と選択ポイント
皮下注射の注射部位は、血管や神経が比較的少なく皮下脂肪が多いところが適しています。
以下は代表的な投与部位とその特徴です。
| 部位名 | 具体的な位置 |
|---|---|
| 上腕伸側 | 上腕後側の正中線下1/3の位置 |
| 三角筋前半部 | 上腕外側、三角筋の前方部分 |
| 大腿前外側中央部 | 太ももの前外側の中央あたり |
大人への皮下注射では、該当部位を露出させやすく止血や注射後の観察がしやすいことから、上腕の伸側(上腕の後ろ側)が一般的に使用されます。

一方、インスリン注射では一般的に腹壁が使用されます。
腹壁は、薬剤の吸収速度が速く皮下脂肪が多く注射時の痛みが少ないこと、範囲が広く注射部位をローテーションしやすいことがその理由です。また患者さんから手が届きやすく注射の確認をしやすいことから自己注射にも適しています。
腹壁に皮下注射をする際は、臍周囲5センチの範囲は避けるように注意しましょう。
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なぜ臍回りに皮下注射をしてはいけないの?
- 臍(へそ)周囲は線維組織が多く、インスリンの吸収が不規則になる可能性があるため、注射部位としては避けることが推奨されます。
部位選択時の注意点
① 硬結や脂肪萎縮を防ぐため、部位をローテーションする。
② 皮膚病変や傷がある場所は避ける。
③ 内出血しやすい患者さんの場合、目立たない部位を選ぶ。
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穿刺部位をローテーションする理由
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硬結が形成されると、薬剤の吸収が不安定になり、治療効果が低下する可能性があります。インスリン投与患者の場合、血糖コントロールが困難になることがあるため、特に注意が必要です。
予防策としては、注射部位を定期的にローテーションすることが重要です。同じ部位に繰り返し注射するのを避け、複数の部位を順番に使用することで、硬結の発生リスクを軽減できます。
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硬結とは?
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硬結(こうけつ)とは、注射部位の皮下組織に生じる硬いしこりのことです。皮下注射を同じ部位に繰り返し行なうことで、脂肪組織が変性したり、薬剤成分が沈着・変質して塊になることで発生します。
特にインスリン注射では、定期的な投与となるため硬結が起こりやすく、これを「インスリンボール」と呼ぶこともあります。
皮下注射の基本手技と手順
患者確認と説明
・ 投与薬剤、目的、方法を説明し同意を得る。
※患者さんに「なんのための注射か」「どのような副作用があるか」を伝えることで、不安を軽減し協力を得やすくなります。
必要物品の準備
・ 注射針(一般的に23〜27G程度)
・ 薬剤
・ 消毒綿
・ 手袋
・ 廃棄容器(シャープスボックス)
患者さんの姿勢の準備
穿刺部位を確認する
投与部位の消毒
・ アルコールが残ると刺激になるため、消毒後は乾くまで待つ 。
皮膚をつまむ
※つまみ方が弱いと筋層に達する恐れがあるため注意しましょう。
刺入角度と深さ
・ 刺入深度は針の1/3~1/2(約1.5cm)程度。
・ 針の角度や刺入深さは患者さんの皮下脂肪量によって調整します。
※皮下脂肪が厚い人は角度をつけ、薄い人は浅くしましょう。
逆血がないことを確認
薬液注入
・ 患者さんの全身状態に変化がないか注意する。
針の抜去と止血
※基本的に揉む必要はありません。
観察と記録
・ 電子カルテや記録に薬剤名、用量、注射部位を必ず記載する。
まとめ
皮下注射は看護師にとって基本でありながら、非常に奥が深い技術です。適切な部位選択や手技の正確さは、患者の痛みや合併症の軽減につながります。また、自己注射を行う患者さんへの丁寧な指導も看護師の重要な役割です。
確実で安全な皮下注射の技術を身につけ、患者さんの安心と安全を守りましょう。
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スーパーナース編集部
看護師の働き方を支援して30年の株式会社スーパーナース。
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