副業をしている看護師にとって、避けて通れないのが「確定申告」です。
副業の収入が増えると、給与所得以外の所得として申告が必要になるケースがあります。
「自分は対象なのか」「何を準備すればいいのか」と不安に感じる方も多いでしょう。
この記事では、看護師が副業を行う際に知っておきたい確定申告の基本ルールや、申告が必要な条件、注意点をわかりやすく解説します。
看護師の副業と確定申告の基本ルール
副業を行っている看護師がまず理解しておきたいのは、「すべての副収入が自動的に申告対象になるわけではない」という点です。
確定申告の必要性は、副業の内容・報酬形態・金額によって異なります。
たとえば、メインの勤務先とは別に非常勤勤務をして給与をもらう場合と、業務委託やライティングなどで報酬を得る場合とでは、税金の扱いが違います。
ここでは、確定申告が必要となる条件や、看護師に多い副業のパターンを整理してみましょう。
確定申告が必要になる条件

看護師が確定申告を行う必要があるのは、主に次の3つのケースです。
- 副収入が年間20万円を超える場合
- 複数の勤務先から給与を受け取っている場合
- 業務委託・フリーランスとして働いている場合
これらに該当する場合は、自分で確定申告を行い、所得税や住民税を正しく納める義務があります。
副収入が年間20万円を超える場合
勤務先からの給与以外に得た収入(ライター報酬、セミナー講師料など)が年間20万円を超えると、確定申告が必要になります。
複数の勤務先から給与を受け取っている場合
2つ以上の病院・施設、事業所などで勤務している場合、メイン勤務先以外の給与にも所得税がかからないため、年末調整だけでは完結しません。
業務委託・フリーランスとして働いている場合
個人事業として請け負い、報酬を得ている場合は、収入や経費を自分で計算し申告する必要があります。
国税庁|No.2020 確定申告「確定申告をする必要がある人」
20万円以下なら確定申告は不要?例外と注意点
副業による所得が「年間20万円以下」であれば、所得税の確定申告は不要とされています。
ただし、これは給与所得者(会社員や公務員など)で、年末調整を受けている人に限られる特例です。
たとえば、下記のような例に当てはまるか否か、ご自身で確認しましょう。
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医療ライターなどの報酬が年間18万円でも、住民税の申告は必要
年末調整を受けていない場合(例:短期派遣や日雇い勤務)は確定申告が必要
医療費控除やふるさと納税などの控除を受けたい場合は、20万円以下でも確定申告を行う
つまり、「20万円以下なら何もしなくていい」というわけではありません。
所得税は免除されても、住民税は自治体への申告が必要になるケースが多いため、注意が必要です。
国税庁|No.2020 確定申告「確定申告をする必要がある人」
看護師の副業でよくある所得区分
看護師の副業収入は、「給与所得」以外に該当するケースが多く、主に雑所得または事業所得に分類されます。
どちらに該当するかで、経費の扱いや控除の範囲が異なるため、年間を通じてどの程度の頻度・規模で副業を行っているかが重要になります。
判断が難しい場合は、税務署や自治体の窓口に確認しておくと安心です。
雑所得
雑所得とは、一時的・副次的な収入(例:ライティング報酬、モニター調査、オンライン相談など)のことです。
経費を差し引いた利益を申告し、所得税・住民税がかかります。
事業所得
継続的に報酬を得ており、収入を安定して得ることを目的としている場合は、事業所得です。
「開業届」を提出している看護師や、定期的に講師・執筆活動をしている人はこちらに該当する可能性があります。
確定申告のやり方|流れと必要書類
確定申告と聞くと「難しそう」「時間がかかりそう」と感じる方も多いかもしれません。
ですが、実際の流れを理解してしまえば、それほど複雑ではありません。
看護師の副業の場合、収入や経費の整理、必要書類の準備、申告書の作成・提出という基本的な手順は変わりません。
ここでは、初めての方でもスムーズに進められるよう、確定申告の流れをステップごとに解説し、必要な書類や経費のポイントをまとめます。
ステップ別|確定申告の流れ

確定申告は、大きく分けて5つのステップで進みます。
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STEP1.収入と経費を整理する
- 副業で得た報酬や源泉徴収票、レシートなどを集め、1年間の収支を把握します。報酬明細や振込記録、交通費や通信費なども整理しておくと、経費計上がスムーズです。
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STEP2.必要書類をそろえる
- 確定申告に必要な書類を集めます。副業の種類によって異なりますが、収入を証明する資料(報酬明細・請求書など)や、経費を証明する領収書・レシートが主な対象です。
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STEP3.申告書を作成する
- 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」やe-Taxを使うと、自動計算で簡単に作成できます。パソコン・スマートフォンどちらでも対応しており、医療従事者の副業でも入力項目は共通です。
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STEP4.申告書を提出する
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作成した申告書を、税務署に提出します。提出方法は以下の3つから選択できます。
- ◆ e-Tax(オンライン提出)
- ◆ 郵送で提出
- ◆ 税務署窓口で提出
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STEP5.納税または還付を確認する
- 納税が必要な場合は、期日までに納税を完了します。払いすぎた税金がある場合は、還付金が指定口座に振り込まれます。
確定申告で準備しておくべき書類一覧
副業内容によって必要な書類は異なりますが、基本的に次のような書類をそろえておくとスムーズです。
◆主な必要書類一覧
- 源泉徴収票(勤務先から発行される)
- 副業の収入明細(報酬支払明細書、請求書控えなど)
- 経費の領収書・レシート類(交通費、通信費、書籍代など)
- 控除証明書(生命保険料控除、医療費控除、ふるさと納税など)
- マイナンバーカードまたは通知カード+本人確認書類
- 還付を受け取るための銀行口座情報
これらを年度末までに整理しておくと、確定申告期間に焦らず手続きが行えます。
特に、複数の勤務先がある場合は、源泉徴収票を全てそろえることが大切です。
経費として計上できるもの
副業にかかった費用のうち、「業務に直接関係する支出」は経費として計上できます。
経費を正しく計上すれば、課税所得を減らし、支払う税金を抑えることができます。
看護師の副業で経費にできる主な例
- 通信費(インターネット・スマホ代)
- 交通費(取材・面談・講演などでの移動費)
- 経費の領収書・レシート類(交通費、通信費、書籍代など)
- パソコン・プリンター・ソフトなどの機器購入費
- 書籍・専門誌代、セミナー参加費
- 名刺や印刷物などの制作費
- 仕事部屋の家賃・光熱費の一部(在宅ワークの場合)
ただし、「プライベート利用と兼用しているもの」は按分が必要です。
たとえば自宅の光熱費を全額経費にするのは不可で、業務利用割合に応じて按分(例:30%)します。
領収書やメモを残しておくと、万一の税務調査でも説明しやすくなります。
確定申告の提出先・申告期間と期限
確定申告の提出先は、住所地を管轄する税務署です。
e-Taxを利用する場合は、オンライン上で完結できます。
申告期間・期限の目安
申告期間:毎年 2月16日~3月15日頃まで
納付期限:原則として 3月15日
還付申告(払いすぎた税金を取り戻す手続き)の場合は、翌年1月から5年間提出が可能となります。
締切を過ぎると延滞税や加算税がかかることもあるため、早めの準備が安心です。
看護師が確定申告で気をつけたいポイント
確定申告は、正しく行えば安心して副業を続けられる一方、手続きの仕方を誤ると「職場に副業が知られてしまう」「追加課税を受ける」といったトラブルにつながる可能性があります。
特に看護師は、医療機関や自治体勤務など、就業規則で副業制限があるケースも多いため注意が必要です。
ここでは、確定申告を行う際に気をつけたい3つのポイントを紹介します。
副業が職場にバレないようにするには?
看護師が副業をしていることが職場に知られる主なきっかけは、住民税の通知書です。
確定申告後、自治体から勤務先に「特別徴収(給与からの天引き)」で通知されるため、副業分の住民税が含まれているとバレてしまうケースがあります。
これを防ぐには、確定申告書を提出する際に「住民税の徴収方法」欄で「自分で納付(普通徴収)」を選択することが重要です。
これにより、副業分の住民税は勤務先ではなく自分で支払う形になります。
また、副業が就業規則上禁止されている場合は、事前に確認したうえで、看護師資格を活かした「スポットバイト」や「委託型ワーク」など制限に触れない働き方を選ぶのも方法です。
単発派遣やスポットバイトに興味がある方へ
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確定申告の必要のない範囲で副業を行いたい方には、非常におすすめの働き方です。
どうぞ、お気軽にご相談ください。
税務調査・ペナルティを防ぐコツ
確定申告でよくあるミスは、「経費の証明不足」や「申告漏れ」です。
意図的でなくても、収入や領収書を記録していなかった場合、後から税務署に指摘されることがあります。
特に、副業を始めたばかりの看護師が「経費をどこまで入れていいかわからない」と悩むケースが多いです。
トラブルを防ぐためには、日々の収支をExcelや家計簿アプリで記録し、領収書を保管することが基本です。
業務で使った交通費や通信費などは、業務に関係する範囲を明確にし、プライベートとの兼用分は按分しておきましょう。
また、必要な申告を怠った場合、無申告加算税や延滞税などのペナルティが発生します。
正確な記録と早めの準備が、税務リスクを防ぐ最大の対策です。
確定申告後に注意すべき住民税の取り扱い
確定申告が終わったあとも、住民税の納付方法には注意が必要です。
副業収入がある場合、確定申告で申告した内容が市区町村へ送られ、翌年度の住民税に反映されます。
勤務先の給与から天引きされる「特別徴収」と、自分で納付する「普通徴収」の2種類がありますが、副業分は普通徴収を選択するのが一般的です。
これにより、本業の職場に副業収入が通知されることを防げます。
また、住民税の納付書は5月~6月ごろに届きます。
忘れずに納付しないと延滞金が発生するため、期日を確認しておきましょう。
確定申告をしないとどうなる?
確定申告をしなかった場合、税務署からの指摘により追徴課税(延滞税・加算税など)が発生します。
無申告加算税は原則15%、悪質と判断された場合は20%に引き上げられることもあります。
また、延滞が長期化すると、金融機関や自治体とのやり取りに支障をきたす可能性もあります。
さらに、看護師として医療機関や自治体に勤務している場合、税金滞納があると公的手続きや資格更新に影響を与えるリスクもあるので要注意です。
副業収入が少額であっても、「確定申告を行う責任」は生じます。
誠実に申告しておくことが、将来の信頼にもつながります。
確定申告を正しく行って副業を楽しもう
看護師の副業は、知識とルールを押さえれば安心して続けられます。
確定申告を正しく行うことで、税金面でのリスクを回避できるだけでなく、経費計上によって手取りが増えるメリットもあります。
今後も継続して副業を行う予定がある方は、早めに記録・整理の習慣をつけておくことが大切です。
副業をきっかけに、新しい働き方やキャリアの幅が広がる可能性もあります。
正しい手続きを踏みながら、自分らしい働き方を見つけていきましょう。
看護師の確定申告に関するよくある質問
収入が少額でも確定申告は必要ですか?
- 副業の年間所得(収入-経費)が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。ただし、20万円以下でも「住民税の申告」が必要なケースがあります。年末調整を受けていない場合や、医療費控除・ふるさと納税の控除を受けたい場合も、確定申告をしておくと安心です。
看護師の副業にはどんな所得区分がありますか?
- 副業の内容によって「給与所得」「雑所得」「事業所得」に分かれます。非常勤勤務など給与として支払われる場合は「給与所得」、単発の講師や医療ライター報酬などは「雑所得」、継続的に業務委託契約をしている場合は「事業所得」に該当します。分類によって経費の扱いや控除範囲が変わるため注意が必要です。
確定申告をしないとどうなりますか?
- 確定申告を怠ると、延滞税や無申告加算税などのペナルティが発生します。悪質と判断されると、加算税率が最大20%に上がることもあります。後から税務署に指摘を受ける前に、早めに自主的に申告することが大切です。
確定申告で副業がバレないようにできますか?
- 確定申告書の「住民税に関する事項」で、「自分で納付(普通徴収)」を選択すれば、副業分の住民税が勤務先を通じて通知されるのを防げます。確定申告を行う際は、この欄の記入漏れに注意しましょう。
確定申告で経費として認められるものは?
- 副業で使用した通信費、交通費、書籍代、パソコンやソフト購入費、セミナー受講費などが対象になります。ただし、プライベートと共用している場合は業務利用分だけを按分して計上する必要があります。領収書や明細を必ず保管しておきましょう。
確定申告はスマホからもできますか?
- はい、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」やe-Taxを利用すれば、スマートフォンからでも手続き可能です。マイナンバーカードやICカードリーダーがあれば、電子申告で自宅から完結できます。副業の報酬や経費も、アプリ上で簡単に入力できます。
確定申告のタイミングはいつですか?
- 毎年2月16日から3月15日までが申告期間です。還付申告(払いすぎた税金を取り戻す申告)は翌年1月から可能です。ギリギリになると混雑するため、書類がそろい次第、早めに作成・提出するのがおすすめです。

スーパーナース編集部
看護師の働き方を支援して30年の株式会社スーパーナース。
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