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インシデントとは?看護師の事例と対策・報告の流れを解説

インシデントとは?

医療現場で働く看護師にとって、「インシデント」は避けて通れないテーマのひとつです。

どんなに注意していても、ヒューマンエラーや環境要因によって、ヒヤリとする場面は起こり得ます。

こうした出来事を正しく理解し、報告・共有・改善につなげることが、患者の安全と看護の質を守るために欠かせません。

ここでは、インシデントの意味やアクシデント・ヒヤリハットとの違い、看護師が起こしやすい事例、報告の流れ、再発防止策までをわかりやすく解説します。

目次

インシデントとは?看護・医療現場での意味と定義

インシデントとは、事故や事件に至らなかったものの、重大な結果につながったかもしれない出来事を指します。

実際の被害はなかったものの、医療行為の過程で“ヒヤリ”としたり、“ハッ”としたりする出来事のことです。

医療現場におけるインシデントは、患者以外の家族や見舞客、職員に対して、医療行為や医療機関の環境が原因で障害や不利益が及ぶ、もしくはその危険性があった場合も含まれます

厚生労働省では、インシデントを以下のように定義しています。
 

「インシデント」は、日常診療の場で、誤った医療行為などが患者に実施される前に発見されたもの、あるいは、誤った医療行為などが実施されたが、結果として患者に影響を及ぼすに至らなかったものをいう。

引用:厚生労働省|3 アクシデントとインシデント

 
例えば、以下のような事例です。

  • 点滴を誤った速度でセットしたが、直前に同僚が気づいて停止できた
  • 患者の薬剤を取り違えそうになったが、投与前のダブルチェックで防げた

インシデントは「医療事故の予兆」であり、医療安全の質を高めるための“気づきのサイン”でもあります。

このサインをチームで共有し、改善につなげることが、安全な医療現場をつくる第一歩といえるでしょう。

医療安全におけるインシデントの位置づけ

医療安全の観点から見ると、インシデント報告は「個人の失敗を責めるため」ではなく、「組織全体で再発を防ぐため」に行われます。

ヒューマンエラーは誰にでも起こるものであり、重要なのは、「なぜ起こったか」を分析し、同じ環境・条件下で再び起こらないよう仕組みを整えることです。

例えば、報告内容から「ラベルが見づらい」「確認の手順が不統一」などのシステム的課題が見えてくるケースがあります。

この情報を共有し、マニュアルや教育体制を見直すことで、より安全な看護へとつながります。

厚生労働省の「医療安全対策」は、医療政策におけるもっとも重要な課題の一つであるとし、インシデントを含む医療安全の推進を明記しています。

 

参考文献

厚生労働省|厚生労働省|第2章医療安全の確保に当たっての課題と解決方法
厚生労働省|厚生労働省|医療安全対策

インシデントとヒヤリハット・アクシデントの違い

インシデント・アクシデント・ヒヤリハットの違いの図解

看護の現場では、「インシデント」「ヒヤリハット」「アクシデント(医療事故)」が混同されがちですが、区別の軸は影響の有無と程度です。

ヒヤリハット ➡ インシデント ➡ アクシデントの順で深刻度が高くなります。

それぞれを個別に押さえておくと、現場での判断や報告がぶれません。

いずれも医療安全に不可欠な情報であり、特にヒヤリハットとインシデントは、重大事故を防ぐ“前兆情報”として、記録・報告・共有が重要です。

ヒヤリハットとは

ヒヤリハットとは、「ヒヤッとした」「ハッとした」ものの、実際には“起きなかった出来事”を指します。

💡ヒヤリハット事例

  • 薬剤を取り違えそうになったが、投与前のダブルチェックで気づいた
  • ベッドから降りかけた患者を支え、転倒・転落は免れた

ヒヤリハットは、未然に防げた“気づき”の記録です。

小さく見えても、繰り返しやパターンを把握することで、重大事故の予防につながります。

 

参考文献

厚生労働省|厚生労働省|医療事故情報収集等事業について

インシデントとは

インシデントとは、事象(ミスや手順の逸脱)は起きたものの、結果として患者への影響が軽微、または発生しなかったケースを指します。

💡インシデント事例

  • 点滴の滴下速度を間違えたが、患者に症状が出なかった
  • 患者が転倒したが、外傷や症状が起こらなかった

ヒヤリハットより一歩先の「実際に起きた出来事」として、原因分析や再発防止策の検討対象になります。
 

参考文献

厚生労働省|日本医療安全調査機構|医療事故の機能的な報告体制構築のための手引き

アクシデント(医療事故)とは

アクシデント(医療事故)とは、実際に有害な影響が生じた事例です。

軽度から重度まで幅がありますが、重篤な結果(死亡・重い障害など)に至った場合は、医療事故調査制度の対象になります。

💡アクシデント事例

  • 誤薬により症状が発現した
  • 転倒して骨折した
  • ルートトラブルで状態が悪化した

アクシデントは被害が発生している段階であり、院内報告はもちろん、内容によっては、外部報告(医療事故調査制度)や第三者調査が必要です。
 

参考文献

厚生労働省|厚生労働省|医療事故調査制度の概要について

看護師が起こしやすいインシデント8つの事例

看護師が日常業務の中で起こしやすいインシデントには、いくつかの共通点があります。

多くは「確認不足」「時間的余裕のなさ」「思い込み」が背景にあり、複数の業務を並行して行う現場特有の忙しさも要因のひとつです。

ここでは、看護現場で多く報告される8つのインシデント事例を紹介します。

1.投薬・点滴のミス

看護の現場でもっとも多いインシデントが、薬剤投与に関するものです。

例として、点滴速度の設定ミスや、似た薬剤名の取り違えによる誤投与などが挙げられます。

急速投与によって患者の血圧や脈拍が急変することもあり、特に新人看護師の報告が多い傾向にあります。

原因 確認手順の省略、ダブルチェック不足、焦りや疲労
防止策 チェックリストの活用、バーコード認証システムの導入、夜勤時の声かけ確認

2.転倒・転落

患者の移動や歩行介助の際に起きやすいのが、転倒・転落の事案です。

特に高齢者や認知症患者では、自発的にベッドを離れることも多く、監視体制の強化が必要となります。

原因 ナースコール対応の遅れ、離床センサー未設定、環境整備不十分
防止策 離床センサーの活用、環境チェックの習慣化、夜勤時の巡回強化

3.医療機器の取り扱いミス

輸液ポンプ、シリンジポンプ、吸引機など医療機器の操作ミスも、頻繁に報告されています。

特に、機種が変わった際や設定方法が異なる場合に混乱が生じやすく、使用前確認の徹底が欠かせません。

原因 操作手順の知識不足、確認漏れ
防止策 使用前の点検、機器マニュアルの周知、定期的なシミュレーション研修

4.穿刺ミス・ルートトラブル

採血・静脈注射・点滴ルート固定など、穿刺業務はインシデントが起きやすい領域です。

ルートの固定不十分による抜去、針刺し事故、動脈穿刺などが代表例として挙げられます。

原因 手技の不慣れ、急患対応による焦り、固定テープの選択ミス
防止策 施行前後のルート確認、2人以上でチェック、十分な説明と患者協力の促し

 

参考文献

厚生労働省|厚生労働省|重要事例集計結果

5.患者誤認・申し送りミス

カルテ・指示書の確認不足による患者取り違えや、夜勤交代時の申し送り漏れも、インシデントにつながる典型例です。

患者名の確認を怠ると、誤投薬・検査ミスなど重大な事故につながる可能性もあります。

原因 同姓患者の多さ、記録確認の省略、時間的焦り
防止策 フルネーム確認の徹底、指示書ダブルチェック、申し送りテンプレートの活用

6.記録・カルテ入力ミス

電子カルテ導入により便利になった一方で、記録の誤入力・未入力によるインシデントも増加しています。

誤字や転記漏れ、コピー&ペーストによる情報の誤伝達などが発生要因です。

原因 入力急ぎ、確認不足
防止策 入力後チェックの徹底、記録時間の確保

7.感染防止対策の不備

消毒液の使用ミスや手指衛生の不徹底など、感染防止の基本が守られないケースもインシデントの一因です。

特に新型コロナウイルス流行以降は、PPE(個人防護具)の着脱ミス等が多く報告されています。

原因 忙しさによる手順省略、環境整備の遅れ
防止策 手指衛生ルールの再徹底、チェックリストによる点検、教育の定期実施

 

参考文献

厚生労働省|厚生労働省|医療機関における感染対策ガイドライン

8.夜勤・多重業務による判断ミス

夜勤帯や急患対応など、複数の業務を同時に抱える時間帯では、判断ミスや確認漏れが発生しやすくなります。

特に新人看護師や人員の少ないシフトでは、インシデント発生率が高い傾向があります。

原因 疲労、業務集中、人的リソース不足
防止策 タスク管理ツールの活用、チーム内声かけ、夜勤体制の見直し

新人看護師のインシデント事例

慣れない業務や職場環境で、新人看護師は、ヒヤリハット・インシデントの発生率が高くなりがちです。

新人看護師に多いインシデントの事例は、こちらの記事で紹介しています。

併せて、ご覧ください。

 

インシデント発生時の対応と報告

インシデントが発生したときに重要なのは、「誰の責任か」ではなく「どう対応するか」です。

報告が遅れたり、現場で隠したりしてしまうと、同じミスが再発するリスクが高まります。

ここでは、発生時の初期対応から、インシデントレポート提出までの流れを説明します。

1.初期対応

まず、最優先すべきは、患者の安全の確保です。

たとえインシデントが軽微でも、体調変化や異常がないかをすぐに確認します。

✅初期対応の基本フロー

  1. 患者の状態を確認する
  2. 必要に応じて医師へ報告・処置依頼を行う
  3. 看護管理者(リーダー・主任)へ速やかに報告
  4. 状況を簡潔にメモ(日時・内容・対応者)として残す

2.上司・医療安全管理者への報告

初期対応後は、必ず直属の上司・医療安全管理者に報告します。

口頭報告だけでなく、後の共有・分析に使えるように、事実を簡潔に記録しておきましょう。

報告の際は「5W1H」で伝えると整理しやすいです。

✅5W1H

  • When(いつ):発生日時・シフト帯
  • Where(どこで):病棟・処置室など
  • Who(誰が・誰に):関係者と対象患者
  • What(何が起きた):行為・エラー内容
  • How(どう対応した):その後の経過

3.インシデントレポートの作成と提出

初期対応・口頭報告を終えたら、24時間以内を目安にインシデントレポートを提出します。

この報告書は、組織全体で原因分析・再発防止策を考えるための重要な資料です。

📝インシデントレポートに書く内容

  • 発生日時・場所・患者情報(個人を特定しない範囲)
  • 発生時の状況・対応・結果
  • 発生要因(環境・人・手順・システムなど)
  • 今後の防止策の提案

書く際は、感情的な表現を避け、「事実ベース」「第三者が読んでも理解できる」文章を心がけましょう。

こちらのページでは、効率的な”インシデントレポート”の書き方をくわしく説明しています。

ぜひ併せて、ご参照ください。

 

4.チーム内共有と振り返り

レポート提出後は、チーム内でのカンファレンスやミーティングによる共有・振り返りが行われます。

この際、「誰が悪いか」ではなく、「なぜ起きたか」「どう防ぐか」を中心に議論するのが原則です。

チーム全体で原因を分析し、改善策(チェックリストの追加、環境整備、教育内容の見直しなど)を検討します。

ここでの学びを次のインシデント予防につなげることが、報告制度のもっとも重要な目的です。

 

参考文献

厚生労働省|厚生労働省|医療の質の評価・公表等推進事業

インシデントを防ぐ対策と再発防止策

インシデントを防ぐ3つの対策の図解

インシデントは、個人の注意だけでは完全に防ぐことができません。

多くの場合、環境・人・仕組みの3要素が複雑に関係して発生します。

そのため、看護現場での再発防止には、チームや組織としての「仕組みづくり」が欠かせません。

ここでは、看護師個人と医療機関全体の両面から、インシデントを防ぐための実践的な方法を紹介します。

チェック体制の強化

もっとも基本で効果的な方法が、チェックリストの整備とダブルチェックの徹底です。

たとえば、投薬や点滴、輸血などの業務では、手順ごとの確認リストを設け、「必ず2名で確認」をルール化することで、ヒューマンエラーを減らせます。

さらに、日常業務の中でも、次のような確認を習慣化しましょう。

  • 投薬前に「患者氏名・薬剤名・用量」を声に出して確認
  • カルテ入力後にもう一度内容を見直す
  • 転倒リスクやルート固定状態を巡回時に再確認

このように「気づける仕組み」を作ることで、重大なインシデントの多くは未然に防ぐことができるようになります。
 

参考文献

厚生労働省|厚生労働省|勤務環境改善に向けた好事例集

環境要因の見直し

医療現場のインシデントは、「気をつけていたのに起こってしまった」ケースが少なくありません。

ヒューマンエラーは個人の資質ではなく、環境やシステム要因によって誘発される行動として理解することが重要です。

具体的には、以下のような要因が重なって発生します。

  • 疲労や注意力低下(夜勤・長時間勤務)
  • 薬剤・物品の配置ミスやラベルの不統一
  • 情報伝達の途切れ(申し送り・電子カルテ)

再発防止のためには、人ではなく環境を変える発想が必要です。

インシデントを隠さない職場文化づくり

インシデント再発防止の最大の鍵は、「報告しやすい職場風土」作りにあります。

インシデントを「失敗」として捉えるのではなく、「改善のチャンス」と共有できる組織文化が理想です。

隠蔽や報告遅れは、同じミスの再発を招くだけでなく、医療安全上の重大なリスクになります。

報告後に叱責や評価の低下があると、スタッフが萎縮して報告をためらうようになるため、管理者は「責めない姿勢」を明確に打ち出すことが大切です。

✅報告文化を根付かせるための工夫例

  • 報告書のフォーマットを簡素化して提出しやすくする
  • 報告後は感謝とフィードバックを必ず伝える
  • 再発防止策を全員で考える場(事例検討会)を定期開催

これにより、チーム全体が「安全のために報告する」という共通意識を持ちやすくなります。
 

参考文献

厚生労働省|厚生労働省|安全な医療を提供するための10の要点

看護師のインシデント後のメンタルケア

インシデントを経験した看護師は、多くの場合、強いストレスや罪悪感に襲われます。

「自分のせいで患者さんが危険にさらされたのでは……」と感じ、落ち込みや自己否定に苦しむことも珍しくありません。

しかし、インシデントは誰にでも起こり得ることであり、“失敗”ではなく“改善のきっかけ”と捉えることが大切です。

ここでは、心の整理と立ち直り方、職場での支援体制づくりについて解説します。

落ち込む・立ち直れない時の心のケア

インシデント後、「申し訳ない」「看護師失格だ」と自分を責めてしまう人は少なくありません。

これは責任感が強い証拠であり、看護師としての誠実さの表れです。

まずは、「落ち込むのは当然の感情」だと受け止めましょう。

必要に応じて、信頼できる同僚や上司、産業カウンセラーなどに話を聞いてもらうことも、回復への第一歩です。

人間関係の修復と信頼回復のポイント

メンタルケアは、本人の努力だけではなく、職場全体のサポート体制が重要です。

インシデントを報告した職員に対して、上司が感情的に叱責するような環境では、再発防止にもつながりません。

上司やリーダーは、次のような姿勢で支援することが望まれます。

  • 感情的な非難を避け、「なぜ起きたか」を一緒に考える
  • 再発防止策の検討に本人を参加させ、“一員としての責任と成長”を感じてもらう
  • 必要に応じて勤務調整・メンタル支援を行う

また、同僚が「私も似た経験あるよ」などと声をかけるだけでも、心理的負担は大きく和らぎます
 

参考文献

厚生労働省|厚生労働省|医療安全支援センター運営要領

自己振り返りと成長

心の回復と同時に大切なのが、「なぜ起きたのか」「次にどう活かすか」を考えることです。

振り返りは「責めるため」ではなく、「成長の糧」にするために行います。

たとえば、次のような視点を持つと、前向きな学びにつながります。

  • 同じ状況で何を変えれば防げたか
  • チームの連携や情報伝達に改善点はないか
  • 今後どう行動すればより安全にできるか

こうしたプロセスを通して、インシデントは「終わった出来事」ではなく、「看護師として成長する機会」となっていくのです。
 

参考文献

厚生労働省|日本看護協会|看護職のメンタルヘルスケア

新人看護師の奮闘を描く4コマ漫画

めざせスーパーナース|4コマ漫画のバナー

『めざせスーパーナース』は、新人看護師たまこが”スーパーナース”を目指し、奮闘する姿をコミカルな4コマ漫画で描いています。

インシデントやアクシデントの事例も含め、日々の看護業務での気づきや注意点をわかりやすく解説する内容です。

親しみやすい4コマ漫画なので、スキマ時間やちょっとした息抜きに、ご覧ください。

 

重大インシデント・医療事故との違いと報告義務

医療現場では、日常的な「インシデント(ヒヤリハットを含む)」と、患者に実際の被害が発生する「アクシデント(医療事故)」が明確に区別されます。

しかし、なかには患者の生命や健康に重大な影響を与える「重大インシデント」もあり、これらは特別な報告義務が定められています。

ここでは、それぞれの違いと、医療機関が行うべき対応・報告手順をわかりやすく整理します。

インシデント・アクシデント・重大インシデントの違い

まずは、それぞれの用語の定義と違いを確認しておきましょう。

厚生労働省は、「医療事故」を次のように定義しています。

 

診療に関連して発生した予期しない患者の死亡または死産であって、当該死亡または死産が医療に起因する可能性が否定できないもの

引用:厚生労働省|医療事故の定義について

 

区分 内容 影響度 報告義務
インシデント 患者に影響が出る前に防げた事象 なし 院内報告(任意)
アクシデント 患者に実際の影響が発生した事象 あり(軽度~中等度) 院内報告(義務)
重大インシデント 死亡・後遺症など重大な結果を伴う医療事故 大きい 医療事故調査制度に基づき外部報告が必要

医療事故調査制度とは

医療事故調査制度は、2015年10月から全国の医療機関で義務化された制度です。

医療の安全性向上を目的とし、死亡・死産を伴う医療事故を第三者機関が公正に調査・分析する仕組みとなっています。

医療事故調査制度の目的

医療事故調査制度の目的は、以下の3点です。

  • 医療事故の原因を明らかにし、再発を防止する
  • 医療の透明性を確保し、国民の信頼を高める
  • 医療従事者を不当な責任追及から守る

調査の中核を担うのは、日本医療安全調査機構(旧・医療事故調査・支援センター)です。

同機構は、医療機関からの報告を受けて調査・分析を行い、再発防止策を提言します。
 

参考文献

厚生労働省|厚生労働省|医療事故調査制度について

重大インシデントが発生した場合の報告手順

重大インシデントが発生した場合は、院内だけでなく、外部機関への報告が必要になります。

報告の遅れや隠蔽は、医療安全上の信頼を損なうだけでなく、法的リスクにもつながります。

重大インシデント報告の流れ

  1. 現場の看護師 → 上司・医療安全管理者へ口頭報告
  2. 管理者が状況確認 → 「医療事故」に該当するかを判断
  3. 該当する場合、医療事故調査制度への外部報告(原則30日以内)
  4. 医療機関内での調査開始・報告書作成
  5. 結果は院内共有・外部公表(必要に応じて)

厚生労働省は、報告にあたって「誰が悪いか」ではなく「何が起きたか」を重視し、医療安全文化の醸成を求めています。
 

参考文献

厚生労働省|厚生労働省|医療安全支援センター運営要綱

まとめ

インシデントは、看護の現場で避けることが難しい“人と環境の交差点”で起こる出来事です。

しかし、それを正しく報告し、チームで共有・分析することこそが、医療の安全性を高める大切な一歩となります。

一人のミスを責めるのではなく、「なぜ起きたのか」「次にどう防ぐか」を考える文化を育てることが重要です。

医療安全は、個人の努力ではなく、組織全体の取り組みで守られるもの。

看護師一人ひとりが報告を恐れず、学び合う姿勢を持つことで、“責める文化から支える文化へ”と変わっていきます。

安心して働ける職場づくりと、患者に信頼される医療の実現につなげていきましょう。

看護師のインシデントに関するよくある質問

Q1

医療現場でのインシデントとはなんですか?

  • インシデントとは、患者さんに実際の被害が及ぶ前に気づき、未然に防げた「ヒヤリとした出来事」を指します。たとえば、薬を取り違えそうになったが直前で気づいて投与を止めたケースなどが該当します。
Q2

インシデントとアクシデントの違いは?

  • インシデントは「被害が出る前に防げた事象」、アクシデントは「実際に患者へ影響があった事象」を指します。たとえば、誤薬に気づいて投与を止めた場合はインシデント、誤って投与してしまい症状が出た場合はアクシデントです。
Q3

ヒヤリハットとインシデントは同じですか?

  • ヒヤリハットは「危険を感じたが、ミスに至らなかった出来事」で、インシデントの一種と考えられています。つまり、「ヒヤリハット」は「軽微なインシデント」と捉えるのが一般的です。
Q4

インシデントレポートの目的は何ですか?

  • インシデントレポートは、医療現場で起きた出来事を客観的に記録し、再発防止に役立てるための報告書です。「責任追及」のためではなく、「安全を高めるための情報共有」が目的です。
Q5

インシデントレポートに書き方はありますか?

  • レポートには、発生日時・状況・原因・対応・再発防止策を具体的に記載します。主観的な表現や感情的な記述は避け、事実ベースで簡潔にまとめることが重要です。
Q6

インシデント後、立ち直れないときはどうすればいいですか?

  • インシデントを起こした後の落ち込みや罪悪感は自然な反応です。一人で抱え込まず、上司や同僚、産業カウンセラーなどに相談することが大切です。
Q7

インシデントを隠すとどうなりますか?

  • 報告を怠ったり、隠したりすると、再発リスクが高まり、結果的に患者の安全が脅かされます。また、重大インシデントや医療事故に該当する場合、報告義務違反とみなされることもあります。
Q8

重大インシデントと通常のインシデントは何が違いますか?

  • 重大インシデントとは、患者の死亡や重篤な障害など、医療行為によって重大な結果が生じた事例を指します。通常のインシデントは未然に防げた、あるいは軽微な影響にとどまったケースです。重大インシデントが発生した場合は、院内調査に加え、医療事故調査制度への報告(30日以内)が必要になります。
Q9

インシデント防止のために現場でできることは?

  • ダブルチェック体制の強化、申し送り時の情報共有、業務中のセルフチェックを日常化することが有効です。また、ヒヤリハット事例をチームで共有し、再発防止ミーティングを行うことも効果的です。
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