敗血症や菌血症など、感染症が疑われる場合に行なわれる検査の一つが「血液培養」です。
この記事では、血液培養の目的、手順、分注する順番、そして現場でよくある疑問までをわかりやすくまとめました。
新人看護師はもちろん、手技を再確認したい看護師にも役立つ内容です。
血液培養とは
血液培養とは、血液中に細菌が存在していないかを調べる検査です。
感染症が疑われる患者さんに対して行なわれ、感染源の特定や適切な抗菌薬の選択に欠かせません。
血液中に存在するごく微量な菌を検出する必要があるため、正確な手技と十分な採血量の確保がとても重要です。
血液培養の目的
血液培養は、感染症の診断と治療方針の決定において、重要な役割を果たします。
主な目的は以下のとおりです。
- 原因菌の特定
- 適切な治療薬の選択
- 治療の有効性の確認
感染症の原因となる細菌を特定する。
原因菌に対する薬剤感受性試験を行ない、適切な治療薬を選択する。
治療薬開始後の効果判定(フォロー培養)として、治療の有効性を確認する。
血液培養は単なる採血検査ではなく、患者さんの命にかかわる重要な検査です。
正確な手技とタイミングが、診断の精度と治療の成否に直結します。
血液培養ボトルの種類

血液培養に使用されるボトルは、大きく分けて好気用と嫌気用の2種類があります。
通常はこの2本を1セットとして、合計2セット(計4本)を採血し、幅広い細菌の検出をめざします。
血液培養ボトルの種類
- 好気用ボトル
- 嫌気用ボトル
酸素を必要とする菌(偏性好気性菌、通性嫌気性菌、真菌など)の検出に使用されます。
酸素を嫌う菌(偏性嫌気性菌)の検出に使用されます。採血時には空気の混入を避ける必要があります。
血液培養の採血手順
- 採血前準備
- 穿刺部位を決める
- 血液培養ボトルの準備(キャップを外して消毒)
- 採血部位の皮膚消毒
- 滅菌手袋を着用する
- 血液採取(2セット以上・最低量の確保
- 血液培養ボトルに分注する
- ボトルを軽く転倒混和する
- ラベル貼付・記録
- 検体を速やかに検査室へ搬送
くわしい手順は以下のとおりです。
① 採血前準備
検査のオーダー内容、採血本数(通常は2セット)、および採血量を確認します。
採血に使用する物品は、清潔な場所に整えておきましょう。
【必要物品】
- 血液培養ボトル(好気ボトル・嫌気ボトル 各1本 × 必要セット数)
- 採血針
- シリンジ
- 滅菌手袋
- アルコール綿
- 駆血帯
- ラベル(患者情報・採取日時・部位などを記入
- 検査伝票
- 針捨てボックス
②穿刺部位を決める
血液培養では、異なる血管から2セット採取するのが基本です。採血部位は、通常の静脈血採血と同様の部位が選ばれます。
採血部位の選び方についてくわしくはこちら
③ 血液培養ボトルの準備(キャップを外して消毒)
血液培養ボトルにはキャップが付いていますが、内部のゴム栓は無菌ではありません。
そのため、採血前には必ずアルコール綿でしっかりと消毒しましょう。
消毒後はボトルの口やゴム栓に手がふれないよう注意が必要です。
④ 採血部位の皮膚消毒
皮膚の消毒は、中心から外側に向かって円を描くように行ないます。
まず1回目は、広めの範囲を拭いて物理的な汚れを取り除くイメージで消毒します。続いて2回目は、穿刺部位の周囲を中心に、菌をしっかり除去するつもりで丁寧に拭きましょう。
⑤ 滅菌手袋を着用する
滅菌手袋を使用する場合は、皮膚消毒のあと、このタイミングで装着します。
滅菌手袋がない場合は、未滅菌の手袋でも実施可能ですが、清潔操作には十分注意が必要です。特に、皮膚消毒後に穿刺部位へふれないようにすることが重要です。
⑥ 血液採取(2セット以上・最低量の確保)
成人の場合、血液培養ボトル1本あたり8~10mLの採血が目安となるため、1セットでは合計16~20mLの採血が必要です。採血量が不足すると、血中に菌が存在していても検出できず、偽陰性となる可能性があります。
そのため、十分な採血量の確保が非常に重要です。
抜針時には針先が何にもふれないように注意しましょう。
特にアルコール綿を使って穿刺部を押さえる場合は、針を完全に抜いてから行なうようにしてください。針先がアルコール綿に触れると、皮膚常在菌などが針に付着し、検体の汚染(コンタミネーション)につながる可能性があります。
⑦ 血液培養ボトルに分注する
分注する時は嫌気ボトル→好気ボトルの順番が推奨されます。
分注する順番についてくわしくはこちら
採血量が不足してしまった場合は、好気ボトルを優先して分注しましょう。菌血症の原因菌は、好気性菌や通性嫌気性菌が多いためです。
⑧ ボトルを軽く転倒混和する
採血後は静かに転倒混和して血液と培地をなじませます。強く振ると泡立ちや溶血の原因になるため注意しましょう。
⑨ ラベル貼付・記録
採血後は、患者情報の記載と記録の徹底が重要です。
- 患者名、採血日時、採血部位などの必要事項をラベルに明記しましょう。
- ラベルは、ボトルの印字面やバーコードを隠さない位置に貼付するよう注意します。
- 採血後は、電子カルテや検査伝票への記録も忘れずに行ないましょう。
⑩ 検体を速やかに検査室へ搬送
採血後の検体は、室温で速やかに検査室へ搬送しましょう。冷蔵保存は菌の発育を阻害するため避ける必要があります。
もし搬送がすぐにできない場合は、直射日光や高温を避けて常温で保管してください。
検体の状態が変化すると、検査結果に影響を及ぼす可能性があるため、搬送のタイミングと保管環境には十分注意が必要です。
血液培養の採血部位
血液培養の採血部位は、通常の静脈血採血と同じように、左右の肘の静脈(肘窩静脈)を使うのが一般的です。上肢の静脈が確保しづらい場合は、前腕や手背、足背の静脈なども選択肢になります。
採血は、1セットずつ異なる部位から採取することが原則です。
※1か所から採った血液を2セットに分けることは、検査の信頼性を損なうため避けましょう。
同じ腕でも異なる血管からであれば採取可能ですが、可能であれば左右の腕など、別の部位から採取する方が望ましいとされています。
中心静脈カテーテルからの採血は基本的には行ないませんが、カテーテル関連血流感染症(CRBSI)を疑う場合には、末梢血との比較培養を行なうことがあります。
血液培養の注意点
血液培養を行うタイミング
血液培養は、抗菌薬の投与前に実施することが重要です。
抗菌薬を投与してしまうと菌が死滅し、検出できなくなる可能性があるため、採血を行なうタイミングには十分注意しましょう。
血液培養ボトルに分注する順番

血液培養の分注は、「嫌気ボトル → 好気ボトル」の順番で行ないます。これは、シリンジ内に残った空気が嫌気ボトルに入らないようにするためです。
採血後のシリンジを下向きにして分注すると、空気はシリンジの上部にたまります。もし嫌気ボトルをあとにすると、その空気が混入し、嫌気性菌の発育に悪影響を与える可能性があります。
一方、好気ボトルに空気が入っても菌の生育には影響はありません。
そのため、嫌気ボトル→好気ボトルの順番で分注することが推奨されています

分注の順番、おすすめの覚え方はこちら
コンタミネーション(汚染)を防ぐための4つの鉄則
血液培養では、皮膚常在菌などによる汚染(コンタミネーション)を防ぐことが、検査の信頼性を保つうえで非常に重要です。
以下のポイントを徹底することで、偽陽性のリスクを減らすことができます。
- 手指衛生の徹底
- 皮膚消毒後は穿刺部にふれない
- ボトルのゴム栓も必ず消毒する
- 作業環境を清潔に保つ
汚染による偽陽性は、不要な抗菌薬の投与や入院期間の延長につながる可能性があるため、こまかな手技にも注意が必要です。
まとめ
血液培養は、採血手技のなかでも特に清潔操作が重要です。手技のポイントを確実に押さえ、信頼できる検査結果につなげましょう。
看護師の血液培養に関するよくある質問
血液培養はなぜ2セット必要なのですか?
- 血液培養では、①菌の検出率の向上②コンタミネーション(汚染)の鑑別のため、2セット採取することが推奨されています。
同じ腕で採血しても大丈夫ですか?
- 同じ腕でも、異なる血管からであれば採血は可能です。
ただし、可能であれば反対側の腕など、別の部位から採血するほうが望ましいとされています。
採血量の最低量はどのくらい?
- 成人では1本8~10mL(1セットで16〜20mL)が理想です。少なすぎると偽陰性の原因になります。
採血量が足りなかった場合、どちらのボトルを優先しますか?
- 好気ボトルを優先します。菌血症の原因菌は、好気ボトルで培養可能なものが多いためです。
滅菌手袋は必ず必要ですか?
- 必ずしも必要ではありません。しかし、血液培養は通常採血よりも厳密な清潔操作が求められます。
穿刺部位消毒後、指で血管を確認するのであれば滅菌手袋の使用が推奨されます。
分注ホルダーは使ったほうがいいですか?
- 針刺し事故防止のため、使用したほうが安全です。
日本臨床微生物学会|血液培養検査における Diagnostic Stewardship
スーパーナースは看護師に特化した人材紹介派遣会社です。
これまで多数の看護師さんと取引先とのマッチングの実績があり、看護師に特化している会社だからこそのマッチング率、リピート率の高さ、案件数、全国展開、といったさまざまな強みがあります。
お仕事探しや転職に関心がある方は、ぜひ一度、スーパーナースにご相談ください。

スーパーナース編集部
看護師の働き方を支援して30年の株式会社スーパーナース。
派遣や転職をはじめとした就業経験豊富な看護師と編集スタッフが「看護師のはたらく」に関する情報を日々お届けします。






