気づけば、手の甲が白く粉をふいていたり、指先が引きつるように痛んだり。
看護師にとって手荒れは、季節や年齢に関係なく“毎日の悩み”としてつきまといますよね。
こまめに塗りたい気持ちはあるのに、現場ではどうしても後回しになってしまう。
処置が続けば手を洗う回数は増え、アルコール消毒で油分は奪われ、「はぁ…今日もガサガサだな」とため息が出ることも……。
手荒れは“仕方ないもの”ではなく、少しの工夫で変えていけるケアのひとつです。
この記事では、看護師特有の手荒れの原因と、仕事の合間でも無理なく続けられる、“ハンドケアのコツ”をまとめました。
特別なことをしなくても、今日からできることばかりです。
ぜひ試してみてくださいね!
諦めないで!看護師の手荒れ
看護師の手荒れは、手洗い・アルコール・手袋の摩擦といった“日常の動作”が積み重なって起きます。
このダメージが続くと、皮膚のバリア機能が弱まり、さらに刺激に敏感になってしまう……という悪循環に陥りやすくなります。
まずは、手が荒れる仕組みを少しだけ知ることで、選ぶハンドクリームとケアの仕方が変わっていきます。
手荒れが起こるメカニズム
アルコール消毒は、“瞬時に油分を奪う”働きがあります。
本来、皮膚の表面には外敵から守る「皮脂膜」がありますが、これが頻回の消毒で薄くなり、乾燥しやすい状態になってしまうのです。
さらに、石けんやハンドソープでの手洗いは、汚れだけでなく皮膚のうるおい成分まで洗い流してしまいます。
そこに追い打ちをかけるのが、手袋の摩擦。
湿った状態で着脱を繰り返すことで角層ダメージが進行し、ひび割れ・赤みなどにつながります。
「なんとなく選ぶハンドクリーム」では守れない理由
ドラッグストアにはたくさんのハンドクリームが並んでいますが、看護師の手荒れは“ただの乾燥”ではなく、皮膚バリアの低下・摩擦・消毒刺激などが絡み合った複合型。
つまり、「とりあえず保湿しておこう」では、足りないことが多いのが特徴になっています。
肌の状態に合わせた成分選びや、仕事中に続けられる塗り方ができるかどうかが大切です。
ここを知るだけで、効果の出方がぐっと変わってきます。
ハンドクリームは“成分”で選ぶ

看護師に必要なのは、“短時間でちゃんと効く”ハンドクリームです。
そのためには、成分の特徴をざっくり知って選ぶのがいちばんの近道といえます。
ここでは、ハンドクリームの成分をメインにまとめてみました。
バリア機能を補う成分
バリア機能を補う成分は用途で選び分けることで、無駄のないケアにつながります。
ワセリン
ワセリンは、皮膚表面に薄い膜を作り、水分を逃がさないようにしてくれます。傷があるときや、ひび割れが痛む時期にも使いやすいのが特徴です。
セラミド
セラミドは、角層のすき間を埋めて、肌のバリア機能を高めてくれる成分です。乾燥が慢性化している人や、刺激に弱い肌の方に向いています。
シアバター
シアバターは、濃厚な保護力があり、夜やオフの日の集中ケア向き。手荒れが進んで“ゴワつき”を感じている人にもおすすめです。
仕事中に使いやすい処方
日勤や処置の合間にサッと塗るには、重たすぎるクリームは不向きです。
グリセリン系の軽い処方は、塗ってすぐにキーボードや書類に触りたい時でもストレスがありません。
また、香りが強いものは患者さんの体調や好みに配慮が必要なため、無香料または控えめが定番です。
「仕事中は軽め、オフの日はしっかり保湿」など、場面で使い分けるといいでしょう。
尿素の注意点と使い分け
尿素は“角質を柔らかくする”成分ですが、荒れが強い時やひび割れがある時は、刺激になることがあります。
肌状態が落ち着いている日や、オフの日にピンポイントで使うのが理想的です。
使い分けさえできれば、とても心強い成分といえるでしょう。
看護の現場で人気のハンドクリーム
医療者のハンドクリーム選びは、「保湿力」だけで判断しないほうがうまくいきます。
手荒れの度合い、勤務の状況、使うタイミングによって“ちょうどいいタイプ”が変わってくるからです。
ここでは、現場でよく名前が挙がる、代表的なクリームをまとめました。
保護力重視『ロコベース』

乾燥が一気に悪化した日や、アルコール刺激にしみやすい時期に頼りになるのがロコベース。
こってりとした硬めのテクスチャで、肌の上にしっかりとした保護膜を作ってくれるタイプです。
「水を触るたびに痛む」「手の甲がつっぱって動かしにくい」そんな日に向いており、夜勤前や就寝前の集中ケアにちょうど良い存在といえます。
少し重めのテクスチャですが、手荒れが深刻なときには、安心感がぐっと増すクリームです。
日常使い『アトリックス』『ニュートロジーナ』
毎日のこまめなケアに向いているのが、この2つ。
アトリックスはベタつきにくく、さらっと伸びるテクスチャで、電子カルテや書類作業の多い日勤でもストレスなく使えます。
ニュートロジーナはしっとり感がありつつも重すぎず、手の甲が白くなりやすい人や乾燥を感じやすい人に人気。
どちらも「気づいたときにサッと塗れる」扱いやすさがあり、現場で自然と手に取られている定番アイテムです。
手荒れが強いとき『ユースキン』

ひび割れが出てきたり、赤みが増して“痛い”と感じる日は、ユースキンが心強い味方。
ビタミン系の成分が入っており、荒れた肌にじんわりなじむような使い心地が特徴です。
少し香りに特徴がありますが、そのぶん保湿力が高く、寝る前にしっかり塗っておくと、翌朝の手が落ち着きやすくなります。
「今日は手が限界……」と感じる日のレスキュー的なポジションとして、とても使いやすいクリームです。
シフト別に続けやすい“ハンドケアルーティン”
仕事中は「塗りたいのに塗れない」が本音。
だからこそ、負担なく続けられる“現実的なケア”が大切です。
シフトごとに、取り入れやすい方法をまとめました。
日勤:手洗い直後だけ塗る“最短ケア”
日勤はとにかく動きっぱなし。
こまめにケアしようと思っても、ナースコール・処置・記録…と、手を止めるタイミングがなかなかありません。
そんな日勤の最適解は、『手洗い直後に塗る』これだけです。
皮膚の水分が逃げやすい“洗った直後”に保護膜を作ることで、手荒れの進行を抑えることができます。
短時間で済むので、手を拭く→塗る→すぐ次の行動へ、という流れが自然に続いていくはずです。
夜勤:仮眠前の集中保湿
夜勤は、日勤よりも“手を止めるスキマ時間”が少し多いのがポイント。
特に仮眠前は、じっくりケアできる貴重なチャンスです。
おすすめは、『軽く塗る → 手のひらで温める → 指先をほぐす』という3ステップ。
血流がよくなり、クリームが浸透しやすくなります。
むくみやこわばりの軽減にもつながるので、翌朝の手がふっくら落ち着くのを感じやすいはずです。
オフの日:尿素×保湿の2段階ケア

休日は、角質ケアを取り入れられるチャンス。
荒れやすい人は、『尿素で角質柔らかく → 仕上げに濃厚クリームで密封』という2段階ケアが意外と効きます。
忙しい毎日の中で負担なくできるので、手荒れが悪化しやすい季節にも取り入れやすい方法です。
手荒れを悪化させないためのコツ
日々のケアにプラスして、“ちょっとした習慣”を変えるだけでも手荒れはぐっと軽減します。
どれも、今日からできる小さな工夫です。
手洗いの温度・拭き方の工夫
熱すぎるお湯は皮脂を奪いやすく、乾燥の原因につながります。
『ぬるま湯にする』だけで、皮膚への刺激はぐっと減らせるのです。
また、ペーパータオルでゴシゴシこする代わりに、『ぎゅっと押し当てて水分を吸わせる』、これだけでも角層ダメージが抑えられます。
手袋の摩擦対策と内側のケア
湿った手で手袋をつけると、摩擦が大きくなり荒れが進行しやすくなります。
できる範囲で、手袋着用前に“軽く手を乾かす”だけでも違いが出るのです。
また、汗で手がふやけるタイプの人は、『無香料の軽いクリーム → 完全に馴染ませてから手袋』の順番がおすすめ。
手袋の内側トラブルの予防になります。
ハンドクリームの“正しい塗り方”
同じクリームでも、塗り方ひとつで効果が変わります。
- 指の間
- 手の甲
- 手のひら
上記の順で伸ばすと、乾燥しやすい場所を優先して守れる形になります。
最後に手のひら同士を合わせて温めると、保湿力がぐっと高まります。
まとめ|明日の自分の手を、今日から守る
毎日、患者さんに触れる手。
処置をし、ケアをし、記録をし、気づけば一日で何十回も酷使している大切なパーツです。
手荒れは、「どうせ治らないもの」と思われがちですが、実は“小さな積み重ね”で変わっていきます。
忙しい日でも、手洗い直後にひと塗りするだけ。
夜勤前に少しだけ念入りにケアするだけ。
その一つひとつが、未来の自分の手を守るための一歩になります。
今日のケアが、明日の仕事のしやすさにつながりますように。
小さな習慣から、手をいたわる時間を作ってみてくださいね。

スーパーナース編集部
看護師の働き方を支援して30年の株式会社スーパーナース。
派遣や転職をはじめとした就業経験豊富な看護師と編集スタッフが「看護師のはたらく」に関する情報を日々お届けします。






