看護師業界での活躍を考える際、「准看護師」と「正看護師」の違いを理解することは、キャリアプランを立てるうえで非常に重要です。
本記事では、この2つの資格の違いについて、業務範囲や給与の差など、主要なポイント4つを徹底比較し、わかりやすく解説します。
准看護師と正看護師にどういった違いがあるのかを知り、キャリアプランや将来の選択肢の参考にしてください。
違い①業務範囲
正看護師と准看護師が担当する仕事内容を比較し、実際の現場での役割分担や日常業務の違いについて紹介します。
准看護師と正看護師との業務内容の違い
准看護師と正看護師では、業務内容に大きな違いはなく、同じ看護業務を行ないます。
しかし、決定的に異なるのは准看護師は自己判断で業務を行なうことができない点です。看護師は患者の状態を観察したうえで、自らの判断で処置を行なうことができますが、准看護師は必ず看護師や医師の指示を受けてから業務を行なう必要があります。
たとえば、正看護師は看護計画の作成や管理を行ないますが、准看護師はその計画を理解し、実践する立場となります。
このように、正看護師はより専門的で責任が重い業務を担当するため、キャリアアップや専門分野への挑戦の機会が広がります。
一方で、准看護師は安定した業務を通じて基礎的なスキルを磨くことができます。
違い②受験資格や試験範囲
看護師と准看護師の違いの2つ目は、受験資格や試験範囲についてです。
准看護師試験と看護師国家試験の受験資格
准看護師試験と看護師国家試験では、それぞれ異なる受験資格が設定されています。
これらの試験に合格するためには、応募条件や必要な学歴などを正確に理解し、適切な準備を行なうことが重要です。
准看護師試験の受験資格
専門学校や高等学校の衛生看護科の准看護師養成課程を修了していること。
年齢制限:設けられていません。
看護師国家試験の受験資格
看護大学や短期大学、専門学校の看護師養成課程を修了していること。
年齢制限:設けられていません。
看護師国家試験の受験資格のほうが、准看護師よりも高い学術的要件を満たす必要があります。
准看護師試験と看護師国家試験の試験範囲
准看護師試験と看護師国家試験の試験範囲について詳しく解説し、効率的な勉強方法や対策について紹介します。
准看護師試験
基礎看護学や臨床看護学、看護関連法規など幅広い分野が出題されます。
試験形式はマークシートの選択式です。
看護師国家試験
准看護師試験に比べてより高度な専門知識と応用力が求められます。
状況設定問題も出題され、実践的な対応力がより試されます。
試験形式はマークシートの選択式です。
効率的な勉強方法
最初に各試験の公式ガイドラインを確認し、出題範囲を把握しましょう。
次に、過去問を繰り返し解くことで、出題傾向や頻出テーマを把握し、重点的に学習する部分を絞り込みます。そのうえで、計画を立てるようにしましょう。そうすることで、効率良く学習を進めることができるでしょう。
また、試験当日に焦らず対応できるようシミュレーションを行ない、時間配分を考えておくことも大切です。
なお、試験範囲は毎年若干の変更があるため、最新の試験情報を常にチェックすることが必要です。特に、新たな医療技術や制度の導入に伴い、出題内容が更新されることがあるため、最新の教材や公式発表を参考にすることをおすすめします。
准看護師免許と看護師免許の取得にかかる費用
資格取得をめざす際には、教育費用や試験費用、その他関連する経費を把握し、予算計画を立てることが重要です。
以下では、各免許の取得に必要な総費用や費用負担の軽減策について解説します。
教育費用
准看護師をめざす場合、主に専門学校や高等学校の衛生看護科への入学が一般的で、平均的な学費は授業料の他実習費などを含め約100万円程度です。
正看護師をめざす場合は、専門学校のほか短大、四年制大学に進学することも多く、学費は約300万から700万円程度。准看護師に比べ、費用を抑えたとしても3倍と高額になります。
試験費用
准看護師試験の受験料:6,900円
看護師国家試験の受験料:5,400円
※ともに2025年度の情報です。
となっています。加えて、受験準備のための参考書や通信講座の費用が別途必要となり、これらも考慮に入れる必要があります。
総額
そのほか、教材費や交通費、資格取得後の登録料などの費用がかかります。個々の状況や学習スタイルによって異なりますが、総額の目安は次のとおりです。
准看護師の場合:約110万から150万円程度
正看護師の場合:約310万から750万円程度
資格取得にかかる費用を抑えるための方法
経済的負担を軽減する方法について紹介します。
まずは、資格取得にかかる費用を抑えるためには奨学金を利用するという方法があります。多くの教育機関や公益財団法人から奨学金が提供されていて、返済不要のものもあります。
次に、返済は必要ですが、日本政策金融公庫などが提供する学費ローンを活用し、学費を分割で支払う方法もあります。
このように、奨学金やローンの活用を検討することで、健全な資金計画を立て、無理なく資格取得をめざしましょう。
違い③給料・待遇・キャリアアップ
看護師と准看護師の給料、勤務時間や待遇、キャリアアップ等の違いは、職業選択や将来のキャリアプランを考えるうえでは重要なポイントです。
准看護師と正看護師の給料の差
准看護師と正看護師では、一般的には正看護師のほうが高い給与を得る傾向があります。
その差は働く地域や勤務先によっても変動しますが、准看護師と正看護師の求人による給与を比較した例を紹介します。
准看護師 | 平均年収420万円 |
正看護師 | 平均年収500万円 |
年収にすると、正看護師は准看護師に比べて約80万円ほど高く設定されていることが一般的です。
特に専門的なスキルや資格を有する正看護師は、より高い給与を得やすい傾向にあります。
正看護師として働くことで得られる経済的なメリットは、単に給与だけでなく、ボーナスや昇給の機会、さらには福利厚生の充実など多岐にわたります。昇進の機会があることで、キャリアアップを図れ、将来的な収入アップも期待できます。
給与格差の原因としては、正看護師が担う高度な医療ケアや管理業務への責任の重さが影響しています。今後、医療現場のニーズの多様化や看護師不足の解消に伴い、正看護師の給与水準がさらに上昇する可能性も少なくありません。准看護師から正看護師への転身は、今後、いっそう魅力的な選択肢になる可能性があります。
勤務時間や待遇の違い
准看護師と正看護師では、勤務時間や待遇にも違いがあります。
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正看護師
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勤務時間:24時間体制の病院などでシフト勤務が一般的であり、夜勤や休日出勤が多い傾向です。
職場環境:高度な医療行為を担当するため、ストレスフルな環境での勤務が求められることが多いですが、そのぶん専門性が高まりやすいです。
福利厚生やサポート体制:福利厚生が充実している職場が多く、研修や資格取得支援などのサポートが手厚いことが一般的です。
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准看護師
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勤務時間:比較的安定した日勤が中心となる職場も多い傾向です。
職場環境:補助的な業務が中心となるため、比較的安定した業務内容で働ける場合が多いです。
福利厚生やサポート体制:准看護師も最近では福利厚生の充実を図る病院や施設が増えてきており、働きやすい環境が整備されつつあります。
たとえば、ある病院では正看護師には夜勤手当や特別休暇がある一方で、准看護師は日勤のみの勤務で、定時に帰れるシフトが組まれています。
このように、准看護師にはプライベートと両立しやすい働き方ができるというメリットがあります。
そのため、准看護師として働きながら正看護師の資格取得をめざす人からは、「働きやすいシフトのおかげで、勉強時間を確保しやすかった」という声も多く聞かれます。
准看護師と正看護師のキャリアアップの可能性の違い
准看護師と正看護師では、キャリアアップの可能性に大きな違いがあります。
正看護師の資格を取得することで、専門分野への進出や管理職への昇進など、多様なキャリアパスが開かれます。
これにより、より高度な医療サービスの提供や、職場運営への関与といった機会が増え、看護師としての専門性と責任の幅が広がります。
具体的なキャリアパスとしては、
- 専門看護師として特定の医療分野に特化する
- 看護管理者としてチームをリードする
- 看護教育者として後進の育成に携わる
といった道があります。
これらのポジションは、正看護師資格を持っているからこそ挑戦できる役割であり、自身の専門性を深めると同時に、職場内での存在感や影響力を高めることが可能です。
違い④求人の数
准看護師と正看護師の違い4つ目は、求人の数です。
准看護師求人数と看護師求人数の違い
正看護師は准看護師よりも幅広い業務を担当できるため、多様な職場での募集が増えています。
また、医療現場での高度な専門知識とスキルが求められているため、正看護師の需要が高まっています。
求人内容としては、高齢化社会の進展に伴い、介護施設や老人ホームでの看護師の需要が急増していて、訪問看護やリハビリテーションなど、在宅医療の分野でも正看護師の求人が増えています。
将来的には、医療技術の進歩や新たな医療サービスの拡充により、正看護師の求人はさらに増加する見込みです。
一方、准看護師の需要も安定しているものの、正看護師ほどの急激な増加は見込まれていません。
准看護師が働ける場所は?
准看護師は、正看護師よりも求人数が限られているとはいえ、多様な医療機関や福祉施設で活躍することができます。
それぞれの職場には独自の特徴や求められるスキルがあり、働く環境やキャリアアップの機会も異なります。
続いて、主な就業先とその特徴について詳しく紹介します。
病院
急性期医療や救急医療を提供する病院では、准看護師は患者の基本的なケアや医師の指示に基づくサポート業務を担当します。幅広い診療科での経験を積むことができ、専門性を高める機会も豊富です。
クリニック
一般診療や特定の専門分野を扱うクリニックでは、准看護師は受付業務や患者の診察補助、日常的なケアを行ないます。小規模な職場環境で患者とのコミュニケーションが密になるため、人間関係を築きやすいのが特徴です。
老人ホーム
高齢者向けの福祉施設では、准看護師は入居者の健康管理や日常生活の支援を担当します。高齢者特有の健康ニーズに対応するスキルが求められ、長期的なケア経験を積むことができます。
訪問看護ステーション
在宅医療を支える訪問看護ステーションでは、准看護師は患者の自宅を訪問し、医療ケアやリハビリのサポートを行ないます。柔軟な働き方が可能で、地域密着型のケアを提供するやりがいがあります。
リハビリテーション施設
リハビリ専門の施設では、准看護師はリハビリプロセスのサポートや患者の状態管理を行ないます。理学療法士や作業療法士と連携しながら、患者の回復を支援する重要な役割を担います。
職場により、異なるスキルや知識が求められます。自身の関心やキャリアプランに合わせて職場を選択するといいでしょう。
准看護師から正看護師へのキャリアアップ
准看護師から正看護師へのキャリアアップは、看護職としての幅を広げ、より専門的な知識と技能を身につけることができる重要なステップです。
正看護師になることで得られるメリット
准看護師が正看護師になることで得られるメリットはさまざまです。
職務範囲の拡大により、より高度な医療行為や専門的なケアを提供できるようになります。また、給与の向上も期待でき、安定した経済基盤を築くことが可能です。
さらに、専門性の向上により、特定の医療分野でのスペシャリストとして活躍できるチャンスが広がります。
実際、多くの准看護師が正看護師になることでキャリアアップを果たし、専門的な職務や管理職に就いているケースが増えています。
正看護師にキャリアアップするための方法
正看護師への道は主に以下の2つの教育ルートがあります。
1看護師養成所への進学
専門の看護学校や大学の看護学部に進学し、必要なカリキュラムを修了することで、看護師国家試験の受験資格を得ることができます。
2実務経験後の進学
准看護師として一定期間の実務経験を積んだあと、看護師養成課程に再度入学し、学業を修了することで正看護師への道が開かれます。
准看護師から正看護師へのフロー
准看護師から正看護師への具体的な流れは次のとおりです。
自分の目標やライフスタイルに合った看護学校や大学を選びます。
入学した教育機関で必要な科目や単位を取得します。
実践的な経験を積むために、各種医療施設での実習を行ないます。
看護師国家試験に向けて、専門的な試験対策を行ない、合格をめざします。
准看護師として働きながら正看護師資格を取得する方法
准看護師として働きながら正看護師の資格を取得するためには、スケジュール管理や効率的な学習方法が不可欠です。
以下では、准看護師として働きながら正看護師資格を取得するためにやるべきことや、おすすめの方法などについて、詳しく解説します。
計画を立てる
まず自身の現在の業務と学習時間を見直し、無理のない計画を立てることが重要です。
次に、正看護師資格取得に必要な知識や技能を洗い出し、優先順位をつけて学習を進めましょう。
スケジュール管理
毎日の業務時間と学習時間をバランス良く配分することが求められます。たとえば、勤務後の時間を効率的に使ったり、週末を活用した集中的な勉強計画を立てましょう。
職場での理解を得ることで、試験勉強に集中できる環境を整えることも大切です。
効率的な学習方法
オンライン学習や通信教育を利用することで、自分のペースで学習を進めることができます。
また、過去問題集や模擬試験は必ず行ないましょう。試験対策を効果的に行なうことができます。
資格取得の負担を軽減
さらに、職場での支援制度や教育プログラムを活用することで、資格取得の負担を軽減することが可能です。
多くの医療機関では、社員の資格取得を支援するための奨学金制度や学費補助、学習時間の確保などのサポートが提供されています。これらを積極的に利用することで、経済的・時間的な負担を減らし、効率的に資格取得をめざせます。
キャリアアップをめざす准看護師にとって、計画的な学習と実務経験の積み重ねが鍵となります。
准看護師として職場での経験を積みながら正看護師資格を取得することで、より高度な医療行為の実施や管理職への昇進など、多様なキャリアパスが開かることになるでしょう。
正看護師資格取得をめざす場合は、無理なく一歩一歩着実に歩みを進めていきましょう。
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スーパーナース編集部
看護師の働き方を支援して30年の株式会社スーパーナース。
派遣や転職をはじめとした就業経験豊富な看護師と編集スタッフが「看護師のはたらく」に関する情報を日々お届けします。
